第3回 それでもCO₂は残ってしまう

お風呂の水があふれたら、まず何をするでしょうか。蛇口を閉めます。ところが、蛇口を閉めても、すでに床にこぼれた水は残ったままです。気候変動の問題も、実はこれによく似ています。

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排出を減らしても、CO₂はすぐには消えない

前回紹介したTorch Towerのように、燃料を替え、これから出るCO₂を減らすことはとても大切です。これは、浴槽へ流れ込む水を少なくすることに当たります。まず蛇口を閉めなければ、水はあふれ続けてしまいます。

では、排出を減らせば、それで解決でしょうか。残念ながら、そうではありません。CO₂は、空気中へ出た後すぐに消えるものではなく、一部は森林や海、土壌に吸収されますが、吸収しきれない分は大気中に積み重なっていきます。つまり排出削減は、増える勢いを抑えるための最優先の対策ですが、これまでにたまった分まではなくしてくれないのです。

「取り除く」というもう一つの方法

そこで必要になるのが、Carbon Removal、つまり大気中のCO₂を取り除き、長く蓄えておくという考え方です。床にこぼれた水を拭き取る作業、と考えると分かりやすいでしょう。

方法は大きく二つあります。一つは、機械や化学の力を使って、空気中から直接CO₂を回収し、地下などへ貯める方法です。もう一つは、森林、湿地、農地、土壌など、自然がもともと持っている吸収の力を守り、回復させる方法です。

ただし、「取り除けるのだから、排出しても大丈夫」ということではありません。床を拭きながら蛇口を開けたままにしていては、いつまでたっても片づかないのと同じです。まず排出を大きく減らし、それでも残る分を取り除く。この順番が大切です。

自然の力は、暮らしも支える

森林を守る、荒れた土地を再生する、農地の土を育てる。こうした自然を生かす方法には、CO₂を吸収する以外の働きもあります。水を蓄え、生き物のすみかを守り、作物を育て、地域の暮らしを支えることにもつながります。

もちろん、自然に任せればよいわけではありません。火災や伐採、土地の劣化によって、いったん蓄えた炭素が再び大気へ戻ることもあります。どこで、誰が、どのように守り続けるのかまで考えて、初めて長く続く取り組みになります。

では、自然はどのようにCO₂を取り込み、どこへ蓄えているのでしょうか。次回は、音も立てずに働き続ける「地球最大級のCO₂回収装置」として、木の光合成、森林、そして土の働きを見ていきます。

HFI代表 福井 誠

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