第4回 それでもCO₂は残ってしまう

お風呂の水があふれそうになったら、まず何をするでしょうか。蛇口を閉めます。前々回のバイオ燃料、前回の交換式バッテリーは、どちらも蛇口から流れ込む水を少なくするための工夫でした。ところが、蛇口を閉めても、すでに床にこぼれた水は残ったままです。気候変動の問題も、実はこれによく似ています。

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方法を組み合わせても、CO₂はすぐには消えない

Torch Towerの現場では、大型機械にはバイオ燃料を使い、電動化しやすい機器には交換式バッテリーを使う取り組みを見てきました。燃料を替える、電気で動かす、同じバッテリーを現場全体で共用する。機器に合った方法を組み合わせることで、これから出るCO₂を着実に減らせます。これは、浴槽へ流れ込む水を少なくし、やがて蛇口をできる限り閉めていくことに当たります。

では、用途に合う技術をそろえ、排出をできるだけ減らせば、それで解決でしょうか。残念ながら、そうではありません。社会には、今の技術や費用では排出をゼロにしにくい活動も残ります。さらに、CO₂は空気中へ出た後すぐに消えるものではありません。一部は森林や海、土壌に吸収されますが、吸収しきれない分は大気中に積み重なります。排出削減は最優先ですが、これまでにたまった分まで自動的になくしてくれるわけではないのです。

「取り除く」というもう一つの方法

そこで必要になるのが、Carbon Removal、つまり大気中のCO₂を取り除き、長く蓄えておくという考え方です。床にこぼれた水を拭き取る作業、と考えると分かりやすいでしょう。

方法は大きく二つあります。一つは、機械や化学の力を使って、空気中から直接CO₂を回収し、地下などへ貯める方法です。もう一つは、森林、湿地、農地、土壌など、自然がもともと持っている吸収の力を守り、回復させる方法です。

ただし、「取り除けるのだから、排出しても大丈夫」ということではありません。床を拭きながら蛇口を開けたままにしていては、いつまでたっても片づかないのと同じです。まず、燃料転換や電動化、省エネルギーなどを組み合わせて排出を大きく減らす。それでも残る分を取り除く。この順番が大切です。

自然の力は、暮らしも支える

森林を守る、荒れた土地を再生する、農地の土を育てる。こうした自然を生かす方法には、CO₂を吸収する以外の働きもあります。水を蓄え、生き物のすみかを守り、作物を育て、地域の暮らしを支えることにもつながります。

もちろん、自然に任せればよいわけではありません。火災や伐採、土地の劣化によって、いったん蓄えた炭素が再び大気へ戻ることもあります。どこで、誰が、どのように守り続けるのかまで考えて、初めて長く続く取り組みになります。

都市の建設現場で、燃料やエネルギーの使い方を変えて蛇口を閉める。森林や土壌の力を育て、こぼれた水を拭き取る。カーボンニュートラルには、この両方が必要です。では、自然はどのようにCO₂を取り込み、どこへ蓄えているのでしょうか。次回は、音も立てずに働き続ける「地球最大級のCO₂回収装置」として、木の光合成、森林、そして土の働きを見ていきます。

HFI代表 福井 誠

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