「勉強して何になるの?」
ネパール・ヌワコット郡の山間部では、この問いがより深刻なかたちで現れています。男性が出稼ぎに出ているために労働力が足りず、子どもたちは農作業を手伝うため学校を休みがちになります。十分に学ぶことができなければ、将来の選択肢は狭くなります。そして、その選択肢が限られているために、結局また選ぶ余地のない出稼ぎに向かわざるを得なくなります。「学ぶことは生活に直結している」のです。
環境問題について学ぶことも同様です。HFIがネパールで取り組んでいるアグロフォレストリーでも、学びと日常生活は切り離されていません。たとえば、植えたモリンガやウコンの成長を、日本の学生が現地の農家や児童と一緒に測定し、それを「炭素記録帳」に記録します。さらに、トリブバン大学中央植物学部と協力して土壌サンプルを採取し、炭素隔離量を科学的なデータとして調べています。そして、その変化を長期にわたって追いかけます。こうして、どれだけ自分たちの農地がCO₂の削減に役立っているかを目で見てわかるようにしています。
約1ヘクタールのパイロット農地でモリンガとウコンを混植した際の年間炭素隔離量は、約2~4tCO2/年です。これは、ガソリン車で約8,000~16,000km走ったときの二酸化炭素排出量、もしくは日本の家庭で使う電力の数か月から半年分に相当します。私たちは「なんとなく環境によい」ではなく、「科学的に確かめられる変化」を農家や現地の子どもたちが実感できることを特に大切にしています。
また、HFIのスタディツアーでは、日本の大学生が現地に入り、地域の人たちといっしょにこのような学びを行っています。教室の外に出て現場の現実に直に触れて学ぶことが重視されます。「何を学ぶか」と同じくらい、「どこで、誰と学ぶか」も大切な問いとなっています。
次回は、農業が「環境問題の加害者」なのか「解決の担い手」なのかを、ヌワコットの農地を舞台に考えていきます。
(HFI代表 福井誠)
