第3回 燃料を替えるから、エネルギーを共有するへ

前回は、大きな建設機械の燃料を軽油からバイオ燃料へ替える取り組みを紹介しました。では、投光器や洗浄機、資材を運ぶ台車のような、もう少し小さな機器はどうでしょうか。こちらには、燃料を替えるのとは別の方法があります。電気で動かすことです。

目次

スマートフォンの電池を、取り替えて使うように

Torch Towerの建設現場では、持ち運べる交換式バッテリーを使い、投光器、高圧洗浄機、自走式台車、ポータブル電源、EVバイクなどを動かす実証が始まりました。バッテリーの残量が少なくなったら、機器を充電につないで待つのではなく、充電済みのものに取り替えます。

もしスマートフォンの電池を簡単に取り外せて、充電済みの電池へすぐ替えられるなら、充電が終わるまで待たずに使い続けられます。交換式バッテリーも、それとよく似た考え方です。使い終えた電池は充電場所へ戻し、別の機器でまた使います。

一台に一個ではなく、みんなで使う

この実証で大切なのは、一つのバッテリーを一台の機械だけに結びつけないことです。あるときは投光器に使い、別のときには台車やバイクに使う。同じ規格の電池を、現場のさまざまな機器で共用します。

たとえるなら、学校の教室ごとに専用の予備電池を置くのではなく、充電した電池を一か所にそろえ、必要な教室が借りて使うようなものです。共通の電池なら、種類をいくつもそろえる必要がなくなり、どれが充電済みかも管理しやすくなります。電動化を広げるには、優れた機械をつくるだけでなく、電池の規格と使い方をそろえることが大切なのです。

環境のためだけではない

機器を電気で動かす利点は、CO₂を減らすことだけではありません。使う場所で排出ガスが出ず、エンジンより音や熱を抑えられれば、屋内の作業もしやすくなります。長い電源コードを減らせれば、準備の手間や、足元でコードにつまずく危険も小さくできるかもしれません。

つまり、脱炭素の取り組みが、現場で働く人にとっても便利で安全な仕組みになり得るということです。「環境のために我慢する」のではなく、仕事をしやすくすることと一緒に進められれば、新しい方法は広がりやすくなります。

大きな機械と小さな機器では、方法を分ける

では、建設現場のすべてを交換式バッテリーで動かせるのでしょうか。今のところ、そうではありません。長い時間、大きな力を出し続ける機械には、電池の重さや稼働時間、充電設備などの課題があります。

そこで、大型機械にはバイオ燃料を使い、電動化しやすい機器にはバッテリーを使う、というように方法を組み合わせます。工具箱の中には、ねじ回しも、かなづちも、ペンチもあります。一つの道具ですべてを直そうとせず、仕事に合う道具を選ぶのと同じです。

燃料を替える。電気で動かせるものは電動化する。そして、同じバッテリーを現場全体で上手に回す。カーボンニュートラルは、どこかにある一つの完璧な技術で実現するのではなく、今使える方法を組み合わせ、少しずつ排出を減らしていく取り組みです。

それでも、すべてのCO₂をなくすことは簡単ではなく、すでに大気中にたまった分も残っています。次回は、蛇口を閉めても床にこぼれた水は消えない、というたとえから、炭素を「取り除く」必要性を考えます。

HFI代表 福井 誠

シェアしていただけましたら幸いです
  • URLをコピーしました!
目次