第8回 放置された土地は未来の資源になる

山あいの農村を歩くと、草木に覆われた段々畑を見かけることがあります。石積みや水路の跡を見ると、かつては作物が育てられていたことが分かります。では、なぜ農家は畑を使わなくなったのでしょうか。「土地を捨てたから」と考えるだけでは、本当の事情は見えてきません。

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続けたくても、続けられない

ネパールの丘陵地域では、都市や海外へ働きに出る人が増え、農村で農作業を担う人が減っています。とくに斜面の畑は、耕すにも、収穫物を運ぶにも大きな労力が必要です。それなのに、農産物を売って得られる収入が少なければ、畑を維持することは難しくなります。

水不足、野生動物による食害、市場までの距離など、理由は一つではありません。耕作放棄地は、農家が怠けた結果ではなく、農業を続ける条件が少しずつ失われた結果なのです。

放っておけば、森に戻るのか

人が畑を使わなくなれば、自然に豊かな森へ戻るように思えます。実際、草や木が育ち始める場所もあります。しかし、すべての土地が順調に回復するわけではありません。

地表を覆う植物が少なければ、強い雨で大切な表土が流されます。石積みや水路が崩れれば、侵食がさらに進むこともあります。乾いた草が積もれば火災の危険も高まります。人の手が離れた土地は、休んでいるというより、行き先が決まらないまま変化している土地なのです。

見方を変えれば、未来の資源になる

それでも、使われなくなった土地は、価値のない場所ではありません。すでに畑として開かれ、道や段々畑が残っている土地なら、新たに森林を切り開かなくても、もう一度生かすことができます。

たとえるなら、耕作放棄地は壊れて捨てられた道具ではなく、今の暮らしに合う使い方を待っている道具です。木と作物を組み合わせ、地表を覆い、有機物を土へ戻せば、土を守りながら収穫を生み出せる可能性があります。土地の再生が農家の収入につながれば、環境を守ることも続けやすくなります。

ただし、外から「この木を植えればよい」と決めるだけでは続きません。誰が管理し、何を収穫し、どこへ売るのか。その土地で暮らす人びとと一緒に考え、小さく試しながら、地域に合う方法を探す必要があります。

次回は、木と農作物を同じ土地で育てるアグロフォレストリーを取り上げます。森か畑かを選ぶのではなく、両方の力を生かす方法を見ていきます。

HFI代表 福井 誠

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