第7回 HFIはなぜ土に注目するのか

気候変動対策と聞くと、発電所の設備や電気自動車、大きな工場の技術を思い浮かべるかもしれません。では、工場も発電所も持たないHFIに、何ができるのでしょうか。その答えを探していくと、ネパールの農村で長く向き合ってきた「土」にたどり着きます。

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土は、環境だけの問題ではない

HFIが最初から土壌炭素を目的に活動していたわけではありません。現場で見てきたのは、農家の収入が安定しないこと、働き手が出稼ぎに出ること、土地が使われなくなること、そして子どもが学び続けることの難しさでした。

ところが、これらをたどっていくと、一つの場所でつながっています。土が流れ、作物が育ちにくくなれば、収穫が減ります。収入が減れば、家族の選択肢も狭くなります。土は、単なる地面ではなく、農業、収入、暮らし、教育を支える土台なのです。

大きな機械ではなく、自然の循環を育てる

第2回のTorch Towerでは、建設機械の燃料を替え、これから出るCO₂を減らす取り組みを紹介しました。これは「出さない」ための挑戦です。一方、HFIが取り組もうとしているのは、木や作物を育て、根や落ち葉を通して炭素を土へ戻すことです。こちらは、自然が持つ「吸収する力」を育てる挑戦です。

たとえるなら、気候変動対策は大きなチーム戦です。企業や行政には、エネルギーや産業の仕組みを変える役割があります。地域で活動するHFIには、土地の状態と人びとの暮らしをつなぎ、自然の循環が続く条件を整える役割があります。方法は違っても、目指す方向は同じです。

測ることを、地域の力に変える

HFIがヌワコットで考えているのは、使われなくなった土地に、モリンガ、コーヒー、ウコンなどを組み合わせて育てるアグロフォレストリーです。土地を緑に戻すだけでなく、農家が収穫を得て、暮らしを支えられる形を目指します。

ここで大切なのが、変化を記録することです。木は育っているか、土は流れにくくなったか、収穫や作業はどう変わったか。炭素は目に見えませんが、土地の変化を測り続ければ、次に何をすべきかを考える手がかりになります。

そして、測定を外部の専門家だけの仕事にしないことも重要です。農家や地域の青年が記録に関われば、その数字は誰かに報告するためだけのものではなく、自分たちの土地を理解し、守るための道具になります。HFIが目指しているのは、支援を続けることではなく、地域の人びとが自分たちで続けられる力を育てることです。

次回は、その実践の舞台となる耕作放棄地に目を向けます。使われなくなった土地は、本当に価値のない場所なのか。そこに残された可能性を考えます。

HFI代表 福井 誠

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