土を手に取ると、ただの砂や泥のように見えます。けれども、その中を拡大して見たらどうでしょう。細菌や菌類、ダニ、トビムシ、ミミズ、そして植物の根が、食べたり、分解したり、栄養を受け渡したりしています。土の中には、私たちの目には見えない大きな社会が広がっているのです。
落ち葉は、土の中の食事になる
森や畑に落ちた葉や枝は、ただのごみではありません。ミミズが細かくし、菌類や細菌がさらに分解することで、植物をつくっていた物質は土へ戻っていきます。いわば、落ち葉は土の生き物たちの食事です。
この過程で生まれるのが、土壌有機物です。そこには炭素が含まれています。一部は微生物の呼吸によってCO₂として空気へ戻りますが、別の一部は土の粒と結びつき、長く土の中に残ります。前回見た木の光合成は、根や落ち葉を通して、土の中の働きへ引き継がれているのです。
土は、出し入れのある貯金箱
土は炭素の貯蔵庫ですが、一度入れれば永久に残る金庫ではありません。植物から炭素が入り、微生物の働きによって一部が出ていく。その出し入れの結果として、土の中の炭素は増えたり減ったりします。
植物の根が張り、落ち葉や作物の残りが土へ戻る場所では、少しずつ炭素をためることができます。反対に、土を深く耕し続け、地表を裸のままにすると、有機物は失われやすくなります。貯金を増やすには、預けるだけでなく、出ていかないように守ることも必要なのです。
土を守ると、暮らしも守られる
有機物が豊かな土は、炭素を蓄えるだけではありません。水をしみ込ませて保ち、植物の根を伸ばし、養分を循環させます。大雨のときには水を受け止め、乾燥したときには蓄えた水を植物へ渡します。作物を育てる力と、炭素を蓄える力は、同じ土の働きから生まれています。
ところが、森林の伐採や過度な耕作で土が傷むと、表土が雨や風に流され、有機物も炭素も失われます。収穫が減り、水を保つ力が弱まり、農家の暮らしにも影響します。土壌劣化は、環境だけの問題ではなく、地域の生活を支える土台が失われる問題です。
では、HFIはなぜ、この土に注目するようになったのでしょうか。次回は、気候変動への対応と、農家の収入、子どもの教育を、一つの土地の上でどう結びつけようとしているのかを考えます。
HFI代表 福井 誠
