森を守るなら木を植える。農家の暮らしを支えるなら畑で作物を育てる。そう考えると、森と農業はどちらか一方を選ぶものに見えます。けれども、同じ土地で木と作物を一緒に育てる方法があります。それが、アグロフォレストリーです。
木と作物を、同じ土地で育てる
アグロフォレストリーは、畑の周りに木を植えたり、木の列の間で作物を育てたりする方法です。ただ近くに植えればよいのではありません。根の深さ、必要な日光や水、収穫までの時間を考え、互いの良さを生かせるように組み合わせます。
たとえるなら、同じ仕事ばかりをする人を集めるのではなく、得意なことの違う人たちでチームをつくるようなものです。深く根を張る木、地表を覆う作物、早く収穫できるもの、時間をかけて育つもの。それぞれが違う役割を持つことで、土地全体をより立体的に使うことができます。
木が土を守り、土が作物を育てる
木の葉は強い雨や日差しを和らげ、根は斜面の土を支えます。落ち葉や剪定した枝が土へ戻れば、有機物が増え、土の中の生き物も働きやすくなります。木は幹や根に炭素を蓄え、その一部を落ち葉や細い根を通して土へ渡します。
一方で、木が多すぎれば、日光や水を作物から奪ってしまうこともあります。ですから、木を植えれば自動的にうまくいくわけではありません。土地の傾斜や水、日照を見ながら、植える場所や本数を調整し、育った後も管理を続ける必要があります。
収穫を一つに頼らない
アグロフォレストリーの良さは、環境を守ることだけではありません。収穫の時期や用途が異なる作物を組み合わせれば、農家は複数の収入源を持つことができます。一つの作物が不作でも、別の作物が育てば、家計への影響を小さくできるかもしれません。
HFIがネパール・ヌワコットで検討しているのは、モリンガ、コーヒー、ウコンなどの組み合わせです。比較的早く収穫できる作物が日々の収入を支え、時間をかけて育つ木が中長期の収入につながることを目指します。ただし、植えれば必ず成功するわけではありません。土地との相性、作業量、加工、販売先まで、農家と一緒に小さく試しながら確かめていきます。
アグロフォレストリーは、森をつくることと農業を続けることの間に橋を架ける方法です。しかし、環境に良くても、農家の暮らしが苦しくなれば続きません。次回は、木を植えるだけでは未来が変わらない理由を、収入、教育、地域社会とのつながりから考えます。
HFI代表 福井 誠
