第11回 土から始まる未来

気候変動という大きな問題に、私たちはどこから向き合えばよいのでしょうか。このシリーズでは、東京の建設現場からネパールの農地まで、さまざまな場所を見てきました。一見すると離れた話ですが、実は二つの道でつながっています。「これから出るCO₂を減らすこと」と、「すでに大気中にある炭素を森林や土へ戻すこと」です。

目次

蛇口を閉め、こぼれた水を拭く

第3回で、気候変動をあふれそうな浴槽にたとえました。まず蛇口を閉め、これ以上CO₂が増えないようにする。Torch Towerで建設機械の燃料を見直す取り組みは、その一例です。

けれども、蛇口を閉めるだけでは、すでにこぼれた水は残ります。そこで、森林や土壌が持つ力を生かし、大気中の炭素を取り込む必要があります。排出を減らすことと、炭素を取り除くこと。どちらか一方ではなく、両方を進めることがカーボンニュートラルへの道です。

土は、いくつもの課題が出会う場所

土は、炭素を蓄えるだけの箱ではありません。水を保ち、作物を育て、農家の収入を生みます。収入が安定すれば、家族の選択肢が増え、子どもが学び続ける条件も整います。土の中の炭素は目に見えませんが、その上には人びとの暮らしがあります。

たとえるなら、土は環境、農業、収入、教育をつなぐ交差点です。どれか一つだけを良くしようとしても、ほかの道が途切れていれば長くは続きません。HFIが土に注目するのは、土を再生することが、地域の暮らし全体を立て直すきっかけになるからです。

未来は、完成した答えではない

HFIの役割は、完成した方法を外から持ち込むことではありません。農家の経験と専門家の知識をつなぎ、地域に合う方法を小さく試し、記録し、話し合いながら改めていくことです。木が育っているか、土が流れにくくなったか、収穫や所得はどう変わったか。そうした変化を地域の人びと自身が確かめ、次の判断へ生かせる仕組みを目指します。

気候変動対策は、遠い場所の誰かに任せる課題ではありません。都市で燃料を選び直すことも、農村で土を守ることも、同じ未来につながっています。一つひとつは小さく見えても、続けられる形で重なれば、社会を変える力になります。

次のシリーズ「土を考える」では、土壌の炭素をどう測るのか、記録をどう信頼できるものにするのか、その環境価値を農家の収入へどうつなげるのかを考えます。未来は、どこかに用意された答えではありません。私たちの足元の土から、一緒につくっていくものなのです。

HFI代表 福井 誠

HFIが目指すのは、木を植えて終わる支援ではありません。土を育て、作物と収入を生み、子どもたちの学びを支えながら、地域の人びとが自ら続けられる仕組みをともにつくることです。あなたの寄付が、苗木や農家の研修、土壌の調査、そして地域の未来を育てる一歩になります。どうか、この長い挑戦に力をお貸しください。

ご寄付はこちら:寄付をする

シェアしていただけましたら幸いです
  • URLをコピーしました!
目次