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ネパール研究(概要)

NPO法人HFIは、アジアの貧困地域の就学・生活自立支援を行っています。

1. ネパール国の概要
1)地形と気候
ネパールは東経80度~88度、北緯26度~31度に位置し、面積はおよそ14.7万平方キロメートルである。国土の北は中国のチベット自治区、東・西・南はインドと国境を接しており、国土は東西1000km、南北に最大241kmと東西に細長い。特に極短い南北の距離の中では農業地として最適な沖積帯のガンジス平野部から、ヒマラヤ高峰群のあるほとんど使い道のない凍土にまで急激に地形が変化している。
また、この両極端な南北二つの地形の間に多くの丘陵地帯や低山地帯が存在しており、これらはチュリア山岳帯やマハーバーラタ山地として知られている。さらに、ヒマラヤ内陸部には砂漠帯にも似た渓谷があり、カリガンダキ川上域帯やベリ渓谷として知られている。これら渓谷はいずれも標高3,600m以上に位置している。
ネパールの地形は、その特徴的な地勢ごとに大きく以下の三つの地域に区分することができる。

(1)Mountain:ヒマラヤ山脈を含む北側の山岳地帯(標高4,000m以  上)
(2)Hill:首都カトマンズを含む丘陵地帯(標高300~4,000m)
(3)Terai:南側のテライ平野(標高300m以下)

(1)山岳地帯(Mountain)
海抜4,000mから8,848mまで広がる上部ヒマラヤは国土面積の15%を占め、ここに8座もの8,000m峰(8,000mを超える高峰。世界に14座ある)がある。 この8座は、エベレスト、カンチェンジュンガ、ローツェ、マカルー、チョ・オユー、ダウラギリ、マナスル、そしてアンナプルナで、この高地は極寒の地であり、風も強く、殆ど人を寄せ付けない土地とも言える。また、農耕地としても土地がやせていて不毛なため、耕作は殆ど行われていない。しかし、海外から多くのトレッカーやクライマーを惹き付けているのはこの上部ヒマラヤである。
    
(2)丘陵地帯(Hill)
国土の大半を占めているのが丘陵地帯と低山ヒマラヤで、住民の多くはこの地域に居住している。国土面積の68%を占めるこのエリアは温暖な気候に恵まれており、その土地も上述の上部ヒマラヤ地帯よりはるかに肥沃であり、標高の高いところでもマハーバーラタ山地の海抜4,000mまでとなっており、おなじ山岳地帯のチュリアはこれよりいく分低く、首都カトマンズもこのエリアに属しており、多くのツーリストが来訪する有名な土地であるポカラやタンセンもこのエリアに属している。

(3)タライ地帯(Terai)
ネパール南部に広がる平野部はタライ平原と呼ばれ、ネパールの西国境から東国境までをカバーするように国の南部地域に横たわっており、国土面積の17%を占めている。ネパールの最低標高点もこのエリアにあって、その地の標高は海抜700mであり、亜熱帯気候に恵まれた極めて肥沃な大地で、国土人口の食用穀物の大部分をこの地域がまかなっている。また南部タライ平原には数多くの保護区があり、チトワン国立公園やバルディア国立公園、シュクラ・パンタ野生動物保護区、コシタップ野生動物保護区等には驚くほどバラエティーに富んだ野生生物が居住しており、この中には絶滅危惧種であるロイヤルベンガルタイガー(Royal Bengal Tiger)や、一角サイ(One-horned rhinoceros)、ガンジスイルカ(Gangetic dolphin)等も含まれている。

なお、ネパールでは、変化に富んだ地形が地域の気候にも大きく影響を及ぼしており、山岳地帯は高山気候、丘陵地帯は温帯気候、テライ平野は亜熱帯性の高温多雨気候となっている。季節的に大別すると、春:3月~5月、夏:6月~8月、秋:9月~11月、冬:12月~2月である。また、ネパールでは6~9月が雨期、10~5月が乾期となっており、雨期と乾期の降水量の差がきわめて大きいことが他の地域には見られない特徴といえる。

2. 人口
2011年にネパール政府が行った国勢調査では、ネパールの人口は2,649万人であり、前回実施された2001年時点の人口2,315万人から約14.4%の増加(年率平均1.35%)が見られる。また、年齢別では30歳以下が人口の約63%となり、今後の豊富な労働力を有していることが分かる。現時点で総人口に占める労働者人口(15歳~59歳)の割合は、57%となっている。さらに地域別でみると、南部のタライ平野に人口の約半数(50.27%)が集中しており、同地域は巨大インド市場と国境を隔てていることから、今後同地域が更に活性化されることが予想される。

図1 2 ネパール人口動態

3. 言語および宗教
ネパールでは、母国語はネパール語であるが、国内には多種の民族が混在しており、インド・ヨーロッパ語系の諸言語を母語とするアーリア系コーカソイドの民族やチベット・ビルマ語系諸言語を母語とするモンゴロイドの民族が存在しており、また、南部のタライ平原部には北インド諸語を話す人々が居住している。
更には、国土の西部地方にはグルン族とマガール族、東中央山陵地帯にはライ族、リンブー族、スヌワール族、高地にはシェルパ族、マナン族、ロパ族、カトマンズ盆地にはワール族、タライ地方にはタルー族、ヤダブ族、各地域にブラーマン族、チェットリ族、タクリ族などが居住し、ネパール国内には125の民族、123の言語(その他確定できない民族、言語も存在する/CBS)で構成される非常に複雑な様相を示す多民族社会である。
現在「国語」とされるネパール語を話す人々は、インド・ヨーロッパ語族の民族で、ネパールの南西部から侵入し、西部丘陵地帯から全国に広がった。つまり、プレティビ・ナーラーヤン・シャー王(1743-1775年)は、現代のネパールを構成する多くの地域を征服した後に、Gorkhali(ネパール語)を国家言語として確立したという。ネパール国民の大部分は、使用頻度は異なるもののネパール語を話す。使用機会の多くは、政府、教育や大部分のラジオ、テレビ放送といった媒体である。ただネパール国内においても民族によっては、ネパール語が第二言語となっており、こうした状況は、教育や公共サービスに関して多少の不便となっていることがある。なお、近年においては、学校教育でも英語の授業が取り入れられ、私立校などでは英語を公用語として使用している学校も存在する。

宗教は、ヒンドゥ教と仏教が2大宗教であるが、総数でいうと約8割がヒンドゥ教徒であり仏教が約1割である。地域別に見ても、中央開発区域では多少ヒンドゥ教徒の割合が少ないものの、地方にいくほどその割合は大きい。非宗教国家であるため、ヒンドゥ教、仏教以外にも、イスラム教、キリスト教など存在するが、国全体で占める割合は少ない。また、ネパールでは民族や宗教ごとに大小の祭日が設定されており、年間通じて各地で様々な行事が行われている。日程は、太陰暦をもとに決定されるため毎年異なる。ヒンドゥ教が起源となっているネパール最大のダサイン祭は、悪魔を排除する強く美しい女神ドゥルガーにちなんで、豊穣と人々の生命力を高めることを祈願する祭とされており、毎年10月後半から11月にかけて実施される。祭りが始まると企業や行政機関も約10日間の休みに入る。学校等の教育機関は2週間くらい休みとなる。また、続けてティハール祭が開催され、これらを合わせると、10月から11月で約1か月続くことになる。

表1 1 ネパールの宗教人口
ネパール全体 東部
開発区 中央
開発区 西部
開発区 中西部
開発区 極西部
開発区
TOTAL 26,494,504 100.0% 5,811,555 9,656,985 4,926,765 3,546,682 2,552,517
Hindu 21,551,492 81.3% 4,144,556 7,426,280 4,221,113 3,277,738 2,481,805
Buddhism 2,396,099 9.0% 458,296 1,409,265 402,411 98,824 27,303
Islam 1,162,370 4.4% 267,159 556,464 219,971 112,815 5,961
Kirat 807,169 3.0% 778,029 27,509 1,267 236 128
Christianity 375,699 1.4% 78,664 165,569 53,747 49,913 27,806
Prakriti 121,982 0.5% 61,159 45,944 6,778 2,416 5,685
Bon 13,006 0.0% 861 464 11,669 12 0
Jainism 3,214 0.0% 1,916 1,161 63 51 23
Bahai 1,283 0.0% 393 194 114 103 479
Sikhism 609 0.0% 169 301 55 39 45
Undefined 61,581 0.2% 20,353 23,834 9,577 4,535 3,282
単位:人 (出典:STATISTICAL YEAR BOOK OF NEPAL-2013/CBS)

4. 生活と文化
1)カースト/エスニック・グループ
歴史的には、インドから侵入したアーリア系ヒンズー教徒が、ヒンズー教的規範とカースト制度を持ち込み、彼らが政治的支配者となることによって、ヒンズー教が広がった。なお、チベット・ビルマ語系諸民族の中には、仏教(チベット仏教)あるいはシャーマニズム的原始宗教を保持している者もいる。
ネパールの社会には、本来は非ヒンズーでネパール語を母語としないエスニック・グループも存在する。しかし歴史的に彼らは支配者の宗教と言語の影響を受け、それを決定的に加速したのが、1854年の民法典「ムルキ・アイン」である。これによってエスニック・グループもカースト・ヒエラルキーの中に組み込まれ、現在においてもネパール社会にその影響が深く刻み込まれている。
もちろん、現在は憲法において法の下の平等が定められている。しかし、上下のヒエラルキーや不可触の実践は、潜在的に社会慣習として続いており、心理面や社会進出においてその影響を及ぼしている。
ネパールの貧困家庭の多くは少数民族や、低カーストの被差別ブループであり、彼らの現金収入は極端に少ない。特に山岳地域で暮らす人々は自給自足に近い生活を送っており、そのような家庭では子供の学校教育に必要な現金がないか、あってもすべての子供を通学させるだけの余裕はない。しかも子供は家庭での大切な労働力であり、学校に就学させるほどの時間もない。特に女子の場合、政府の積極的な施策で就学におけるジェンダー格差は解消されつつあるが、以前は親の意思で就学しにくい環境下にあった。

2)貧困
ネパール政府が1995/96 年に行った第1回生活水準調査(Nepal Living Standards Survery:NLSS)以降、ネパールの世帯所得は向上しており、1995/96から2008/09 年にかけては、名目平均世帯所得は 43,732 ネパール・ルピー(以下、NRs)から202,374NRsと約4.6倍となっている。GDPも成長しており、2008/09 年の実質GDP成長率は5.00%であった。
この結果を受けて、IMFは、ネパールにおける実質GDP成長率が伸びた理由として、投資によるものではなく、送金による消費の増加として分析している。
ネパール経済において海外からの送金を受け取る世帯は、2003/04 年には全世帯の30%であったが、2010/11年には56%に及んでいる。これは世帯所得は上昇しているが、送金をベースとした所得の増加であり、一時的な生活水準の向上や経済成長には有益であるが、海外からの送金への依存は、国内の雇用機会を弱めると同時に海外への移民を促してしまう問題を抱えている。
また、現在所得に改善傾向が見られてはいるが、地域や職業、社会集団間などにおいて格差が生じており、2010/11年の都市部の平均世帯所得は 318,167NRsとなっているが、農村部では171,950NRsであった。
地域別では、最も豊かなカトマンズ都市部の世帯所得が404,511NRsである一方、最も世帯所得が低い中西部・極西部の丘陵部は122,544NRsに留まる。また、民族やカースト、宗教を背景とした貧困格差も生じており、アッパーカーストとネワール人の貧困率が低い一方で、ダリットや丘陵部ジャナジャーティ、タルー、イスラム教徒の貧困率が40%から50%と高い数値となっている。

表1 2 貧困人口
指標名 1996 2004 2011
人口 22,137,784 26,717,875 30,485,798
国別貧困率(%) 41.8 30.9 25.2
貧困人口(人口×国別貧困率) 9,253,594 8,255,823 7,682,421
(出典:World Bank, World Development Indicators)

3)潜在的慣習
先に述べた貧困下で生活苦にある親たちにとって、自分の子どもを働きに出すことは必然的な選択になることと推察できる。しかしながら、本事業の目的の一つである児童労働問題の撲滅にとり組む上で最大の障害がネパール社会に広く見られる、「児童労働は必ずしも悪いことではない」とする潜在的価値意識である。つまり、子どもは働くことで『労働の価値』を学ぶ、という考え方が根強い価値観として存在している。
また、子どもが生まれても出生登録をしない親が多くいる。ことに遠隔地の少数民族の人達の中には出生届を知らず、出生届けを提出してないために、子供が就学適齢年齢に達しても出生証明がない事から学校に入れない状況である。この出生証明書を持っているのは、ネパールの子どもの3分の1だけで、3 分の2は出生登録をされていない。政府は 2010 年までに包括的な登録達成を目指してきたが、大きな改善とまではいかなかった。
さらに、貧困家庭から裕福な家庭へ子供が家事労働者として金銭あるいは物と引き換えに少女が売られていく慣習が何世代にもわたって存在してきた。これはカマラリ制度(女子の債務労働/強制労働)と呼ばれるもので、土地を持たない貧しい小作人は地主から生活のための借金をし、それが溜まり、子ども(特に少女)を家事労働者として売らざるを得ない慣習が出来上がっていったものである。この現象はとくにネパール西部のタルー(Tharu)族あるいはタライ地域(西部平原)に多くみられ、6~8 歳の少女が口約束で地主や仲介業者に売られ、地主やビジネスマンの家や一般の家庭に住み込み、家事手伝いや農作業を強いられてきた。
彼女らは早朝から夜遅くまで働き、賃金も貰えず、1日2 食のわずかな食事が与えられるだけで、しかも日常的にオーナーから肉体的あるいは精神的な暴力と虐待を受け、さらに多くの場合性的虐待も加わる。ネパール政府はこのような状況を憂慮し2000年にこの制度の廃止を宣言(10項目協定)し、カマラリの人々は自由の身となり解放され、2006年には高裁判所がカマラリを違憲とし、違法と判定した。

4)ジェンダー
現在ではジェンダー格差は解消されつつある状況であるが、潜在的な意識の中で女児にとってはジェンダーによる差別が二重にのしかかっている。貧しい家庭で教育費が限られている場合、まず息子の教育費が優先される。少し経済的に余裕がある家は、男子を学費は高いが水準の高い学校へ就学させ、女子は費用のかからない学校に就学させる傾向がある。家父長制的文化規範の根強いネパールの家庭では、男子の教育費は将来一家を支える息子(特に長男)の現金収入への投資として考えられており、結婚して他家へ行ってしまう女子の場合、娘の教育費は「無駄」と考えられていた。ネパールの成人女性の識字率の低さは女子の学校教育の機会の少なさの反映でもある。
また、様々な統計調査研究で示されるように、教育を受けた母親、文字を書ける両親の子供は学校に通う確率が高いと言われ、未就学児童の親は非識字者である場合が圧倒的に多い。
このように貧困、直接/間接の学費の負担、さらに将来への展望が見えないことなどが、子供、特に女子を就学させない主な理由となる。
更に、2010年以前まではネパールでは多くの女児が13~15歳の若さで早くに結婚する傾向があり、15歳から19歳までの女子の4割以上は既婚者であった。この現象は地方で顕著に見られた。
また、出生証明がない事から年齢が不明であり、親が適当に判断して就学させることもあり、実際の年齢に合わないクラスに入ることがあり、それがドロップアウトの原因になっている事も考えられている。さらに、男性による女性と子どもへの家庭内暴力が多く、政府は 2009 年に家庭内暴力(DV)法を導入している。

5)食生活問題
近年の平均生活水準の上昇にもかかわらず、貧困や災害、また特に都市でのジャンクフードの影響によって、栄養不良と栄養失調は、依然ネパールの大きな課題である。
2012年の世界保健機構WTOの調査によれば、ネパールの子供たちの63%がタンパク質エネルギーの栄養失調であり、これは子供が通常の肉体的および精神的な発展を確実にするのに十分な食物を得ていないことを表している。特にストリートチルドレンにその傾向が強くみられ、ネパールの子供たちの半数以上は身体的発育が阻害されている。
また、妊娠している間は子供の母親が十分な栄養を摂取できないため、出産以前の栄養失調が多くの子供たちに打撃を与えている現実があり、新生児の30-50%が2.5kg以下の未熟児で生まれている。
さらに、WTOの報告によれば、幼年期の栄養失調、感染などを患ったことに起因する障害は、 児童の人生に深刻な影響を与えるとしており、ネパールの幼児のほぼ半数が慢性栄養失調を患っている現実から、このことが国の将来に大きな課題を残すこととなる。
しかしながら、ネパールでは教育を受けた一部の女性は子供と自分のために治療を求める傾向が強く、そのことがより良い育児と栄養管理につながり、子供たちの就学について効果的な循環を生んでいる。

6)政治・経済
(1)経済概況
2014年に発表された世銀のネパール・マクロ経済報告書「ネパール開発アップデート」によれば、2015年に制憲議会選挙が実施され、政党間による合意に裏付けられ政治が安定し、また選ばれた政党がネパールの経済的潜在性を最大限活用することができれば、2016年度の経済成長率は4〜4.5%となり、前年度の3.6%から回復することが可能であるとの見解を発表した
一方、ネパール政府は2016年の経済成長率目標を5.5%と発表しており、制憲議会選挙の実施により消費者物価指数は上昇し、ドル高、賃金の引き上げなどを想定しているが、好調な穀物生産量の増加を背景にして物価上昇率は一桁台に抑えられるだろうとしている。
なお、2014年のネパール中央統計局の発表を見てみると、国民一人当たりのGDPはおよそ703アメリカドルであり、GDP実質成長率は5.5%、物価上昇率は9.9%であった。
ネパールの主な産業構造は、GDPの約34%及び就労人口の約66%が農業であり、続いて卸売業が14.4%、運送業が 9.29、不動産業が 8.58%、建設業が6. 9%、製造業が 6. 2%、教育業が 5.4 %、4. 2%、観光業が 1. 8%となっている。

図1 3 ネパール実質GDP年次推移

(2)政治概況
ネパールの政治状況は複雑で、1990年の民主化運動を経て、国王親政体制(パンチャヤート制)から立憲君主制へ移行し、1991年、1994年、1999年には総選挙が実施された。しかし、1996年以降、マオイスト(共産党毛沢東派)が国内の広い地域を勢力下に収めていき、更に、2002年以降に国王の指名により数度組閣されたが、党派対立やマオイスト問題への対応の失策により、いずれの政権も短命に終わった。
その後、2005年2月に自ら政権を掌握するとともに、緊急事態令を発令し、基本的人権の一部制限、各反対政党の指導者等などの拘束、報道に対する検閲を実施した。更に、国王は同年10月に民主化へのロードマップとして、地方選挙(2006年2月)及び下院選挙(2007年4月迄)の実施を発表したが、しかし、各反対政党は国王の一方的な措置であり、国王の政権掌握を正当化するものとしてこれを非難した。
国王と各反対政党との溝が深まる一方、各反対政党とマオイストは連携を模索し、2005年11月、制憲議会選挙の実施、地方選挙及び下院選挙のボイコットを含む12項目に合意し、国王からの政権奪取を目的とした抗議行動を開始した。しかし、国王側は、2006年2月8日、予定通り選挙を実施したため、2006年4月、各反対政党はマオイストと連携し、全国規模での抗議集会やゼネストを展開した。
この時、政府は関係者の逮捕、外出禁止令の発令などにより取締りを強化したが、反国王支持層は拡大、抗議行動の動員数も増加の一途を辿った事から、国王は2006年4月に国民向けテレビ演説を行い、2002年に解散された下院の復活を宣言、各反対政党側もこれを受け入れて抗議行動を撤回し、事態は収拾した。
2006年4月下院の審議初日、制憲議会選挙の実施、マオイストとの対話の再開、停戦の表明等が採択され、同年5月コングレス党のG.P.コイララ政権の下、7名の閣僚で新内閣が発足(閣僚数は後に20名に拡大)。また、2006年5月1の下院宣告を通じ、全ての立法権が議会に属すること、国王の政治や軍事に関する諸権限を廃止すること、王族の継承に関する決定権を議会が持つこと、ヒンドゥ国家から世俗国家に転換することなどが決定され、同宣告に反する如何なる憲法及び法律も無効とされた。
2006年5月のコイララ政権によるマオイストのテロ指定解除を契機として、政府とマオイストによる和平交渉が行われ、この交渉で8項目の合意が成立するなど、和平プロセスは急速な進展を見せた。
2006年7月、ネパール政府は8項目の合意に基づいて国連に対し支援要請を行い、国連が和平プロセスに関与していく方向性が定まった。
同年11月、ネパール政府とマオイストは「恒久平和の実現に向けた合意文書」に署名、2007年6月半ばまでの制憲議会選挙の実施、選挙の自由且つ公正な実施のために国連が国軍及びマオイストの武器管理の監視を行うこと等に合意し、両者は約10年に及んだ紛争の終結を含む包括的和平合意に署名した。
2006年12月に政党政権およびマオイスト両首脳が暫定憲法に署名、2007年1月に公布された。また同時にマオイストを含む暫定議会が発足し、4月には、コイララ首相を長とした、マオイストを含む暫定政府が発足した。
国際社会もこのような政治プロセスを支援するため、2007年1月に国連ネパール政治ミッション(UNMIN)を設立し、日本もこのミッションに自衛隊員6名を軍事監視要員として派遣した。
2007年6月に予定されていた制憲議会選挙は、準備の遅れから同年11月に延期されたが、その後も、マオイストは様々な条件闘争を継続した。
こうした中、2007年11月の選挙日程についても、マオイストの要求である完全比例代表制による選挙及び選挙前の共和制宣言について、政党間の合意が得られなかったことが要因となり、再度延期されることとなった。その後政党間の協議が重ねられ、2007年12月に行われた制憲議会初会合において「連邦民主共和制国家」の移行等を含む23項目の合意に達し、同月末、第三次暫定憲法改正が行われ、また、2008年1月の閣議で2008年4月に制憲議会選挙を実施することが決定された。
これによって4月10日、制憲議会選挙は、一部混乱等もみられたが、概ね平和裡に実施された。
選挙の結果、マオイストが単独過半数には届かなかったものの第一党として大躍進を遂げ、2008年5月に制憲議会の初会合が開催され、連邦民主共和制への移行が宣言され、約240年続いた王制が廃止されることとなった。
その後、いくつかの政権が誕生したが、和平プロセスや憲法制定作業の作業が続いていた事から、何度となく決められた憲法制定期日である2011年5月に開かれた制憲議会で主要3政党(マオイスト、コングレス党、共産党UML)による合意により、同議会が3ヶ月延長されることが決定した。

2012年5月、憲法制定に至らないまま任期切れで制憲議会が解散し、その後、政党間で今後の憲法制定に向けた道筋についてコンセンサスを形成するための話し合いが行われ、2013年3月、主要4政党は、最高裁長官を首班とする選挙管理内閣の下で制憲議会再選挙を実施することに合意し,選挙管理内閣が発足した。
その後、2014年1月の制憲議会開会以降、憲法制定に向けた協議が進められ、2015年9月20日に新憲法が公布され、10月には新憲法の規定に基づいて行われた立法議会における首相投票の結果、統一マルクス・レーニン主義派のK.P.シャルマ・オリ委員長が首相に選出された。しかしながら、
この政権は外交、内政等に多くの問題点を抱えていることから、2016年7月に行われた統一マルクス・レーニン主義派、コングレス党、マオイストの協議により、このK.P.シャルマ・オリ政権は2016年7月末に退陣した。なお、同年8月に行われた国会においてマオイストのユニファド・コミュニスト党の委員長であるプスファ・カマル・タハル氏が新首相に選出された。

(3)ネパールの国家開発
ネパール政府は1956 年より国家開発計画として5 カ年の開発計画を策定し、2002年から2007年を対象とした第10次5カ年計画では、雇用の創出、所得の増加による経済成長を目指し、特に農村部の貧困層の貧困削減に注力する貧困削減戦略文書(Poverty Reduction Strategy Paper:PRSP)として位置付けられている。
更に、第10次5カ年計画の後、この5カ年計画と次期国家計画をつなぐ策として暫定3カ年計画(2007/08-2010/11)が策定された。さらに、暫定3カ年計画の後に、2010/11年-2012/13年を対象とした新たな新暫定3カ年計画が策定された。
この新3カ年計画では、長期的ビジョンとして経済成長を通して、「今後20 年間でのLDC からの脱却し、豊かで平和な国家の実現」を掲げている。更に、この目標を達成する上で、民族、宗教、ジェンダー、地域等から生じる差別と不平等をなくすことの重要性が強調されている。なお、雇用の創出や食料安全保障や教育、保健といった必須サービスの供給、また気候変動からの影響を最小化することなどが優先分野として掲げられ、各優先分野には数値目標が設定されている。
2014年に策定された新暫定3か年計画は、2010/11年-2012/13年の3カ年計画と同じく、引き続き長期的なビジョンとして、今後20年から30年以内に後発開発途上国(LDC)から卒業し、豊かで平和・公正な国家を実現することをビジョンとして掲げている。また、雇用の創出、経済格差の是正、地域間バランスの確保、継続的な経済成長などの施策を通じて、貧困人口の割合を21%以下に減少させることにより、MDGsの達成を目指している。その具体的な重点分野としては、
① 貧困削減を重視した経済成長を広範に行き渡らせるための物的インフラおよび社会インフラの開発
② 経済成長と雇用を実現する農業、観光、産業、輸出の推進
③ 国家メカニズム、セクター、プロセスにおける包摂を実現するための投資
④ 飲料水、エネルギー、電力、道路、食の安全保障、医療、教育といった必要不可欠な社会サービスの実現および継続に資する投資
⑤ 質が高くアクセスしやすい行政サービスをタイムリーに国民へ提供できるグッド・ガバナンスの強化
⑥ 環境保護を通じた気候変動による影響の最小化、機会の活用
⑦ 国策で優先された人々に直接裨益するプログラムおよびプロジェクト
等が挙げられている。
なお、次の4つの分野(インフラ開発、農業開発、人材育成、経済発展)が優先セクターとして位置づけられており、目標を達成するには、政府は年間7%の経済成長率を達成する必要があるとしている。また、政府は経済成長率について農業分野の目標成長率を4.5%、非農業分野の成長率を6.7%と設定し、年間雇用成長率については現在の2.9%から3.2%に増加させることを目標としている。
なお、インフラ開発事業計画ではエネルギー、道路、通信分野の開発に重点を置いているほか、農業・経済分野では農業の商業化、観光、産業と貿易が優先され、人材育成分野では、国内の労働能力を向上させ、競争力を高めることに重点が置かれ、教育セクターはその根幹となる。
教育セクターについては、既に、EFA国家行動計画に基づき以下のような様々な試みがなされてきた。
① ”Welcome to school” プログラム
② 無料教材をすべての公立プライマリー/ベーシック・スクールに配布
③ ”School Feeding” プログラム (“day meal” プログラム)
④ ”Oil for mothers” プログラム
⑤ Dalit(不可触民)に無料で教育の機会を与える(lower secondary とsecondaryの教育)
⑥ 女の子と恵まれない環境の子供たちを対象とした奨学金制度
⑦ 学校建設における海外NGOとの協力
⑧ Community Owned Primary Education (COPE)はコミュニティとのパートナーシップに貢献
⑨ 学校管理をコミュニティに委任するプログラム
⑩ 海外NGO(Save the children, Nepal), イスラエル大使館、ネパール教育課、それから国連組織(UNESCOとUNICEF)が協力し、幼児教育を開発
しかしながら、後述するように、この試みはその殆どが予算不足などの要因により頓挫している。

図2-4地域コミティーの支援による幼児教育児童


7)2015年大規模地震発生による影響
(1)地震発生の概要
2015年4月25日の現地時間の午前11:56分にマグニチュード7.6の大型地震がカトマンズから北西へ76kmのBarpakで発生した。この地震では最初の大きな揺れの後、マグニチュード4.0を超える余震が300回以上、マグニチュード6.0を超える揺れが4回あり、その中には最初の地震から17日後に発生したマグニチュード6.0を記録した余震も含まれている。
ネパールは世界でも11番目に地震の多い国だが、このレベルの地震は80年以上もの間経験したことがなかった。

図1 5 地震被害影響範囲

(出典:GoN/MoHA as of 21 May 2015)

(Categories of earthquake-affected districts)

(2)被害状況
①セクター別被害状況
4月の地震は死者8790人以上、負傷者22,300以上で、ネパール人口の三分の一に当たる約8百万人の生活に影響が出るほどの大惨事であった。
また、救援物資の物流・分配の遅延という問題もあった。これは、多くの対象村落が遠方に位置していること、地形が険しいこと、また地滑りの脅威といった事項が理由として挙げられる。
この、震災による被害額は7,060億NRs(約70億ドル)と見積もられている。また、これらの被害額をセクター別に見てみると、ソーシャルセクターで4,086億NRsと最も被害が大きく、これらはネパールの一般家屋のほとんどが、発生した地震に耐えうる耐震構造になっておらず、家屋倒壊による被害が最も多い。(住宅、居留地は被害合計の約50%の占める)。続いて観光業の11%、環境、教育、金融、農業がそれぞれ約4~5%を占めている。
教育関係では313億NRsの被害額となっている。

表1 3 セクター別地震被害状況
Disaster Effects Distribution of
Disaster Effects Losses in
personal
income
Damages Losses Total Private Public
Social Sectors 355,028 53,597 408,625 363,248 45,377 -
Housing and Human Settlements 303,632 46,908 350,540 350,540 - -
Health 6,422 1,122 7,544 1,394 6,150 -
Education 28,064 3,254 31,318 2,365 28,953 -
Cultural Heritage 16,910 2,313 19,223 8,948 10,274 -
Productive Sectors 58,074 120,046 178,121 158,079 20,043 17,124
Agriculture 16,405 11,962 28,366 25,813 2,553 4,603
Irrigation 383 - 383 - 383  
Commerce 9,015 7,938 16,953 16,953 - 2,667
Industry 8,394 10,877 19,271 19,271 - 3,654
Tourism 18,863 62,379 81,242 75,105 6,137 6,200
Finance 5,015 26,890 31,905 20,937 10,969 -
Infrastructure Sectors 52,460 14,323 66,783 17,281 49,502
Electricity 17,807 3,435 21,242 15,569 5,673 -
Communications 3,610 5,085 8,695 1,712 6,983
Community Infrastructure 3,349 - 3,349 - 3,349 -
Transport 17,188 4,930 22,118 - 22,118
Water and Sanitation 10,506 873 11,379 - 11,379 -
Cross-Cutting Issues 51,872 1,061 52,933 1,755 51,178 -
Governance 18,757 - 18,757 - 18,757 -
Disaster Risk Reduction 155 - 155 - 155 -
Environment and Forestry 32,960 1,061 34,021 1,755 32,267 -
Total 517,434 189,027 706,461 540,362 166,100 17,124
Total (US$ million) $5,174 $1,890 $7,065 $5,404 $1,661 $171
単位:NRP million
(出典:Estimations by PDNA Team)

図1 6 セクター別地震被害金額

震災による被害額の合計のうち、5,170億NRs(合計被害額の76%)は有形資産の被害、1,890億NRs(合計被害額の24%)は商品及びサービスの被害である。商品及びサービスの被害には、地震のために計上された生産費用も含まれる。これらの数字は様々なセクターに跨って収集した社会・経済情報及びデータを基にまとめたものである。損害、損失という点から見ると、有形資産、または耐久財の損失が被害の大部分を占めている。
社会・経済活動を営む主要なセクターにおける被害の内訳を見みると、被害の58%が国民生活セクターで、これには個人住宅を含む。続いて生産セクター(25%)、インフラ(10%)、そしてその他のセクター(7%)となっている。

図1 7 セクター別地震被害割合

(出典:Estimations by PDNA Team)

②地震被害によるGDPへの影響
今回の大規模地震による被害は、当然ネパールのGDPにも影響を及ぼす結果となる。
地震被害状況調査によると、損害・損失の合計金額は概ね2013/2014年度GDPの三分の一に当たる。また、損害額だけで言うと同じ年度のGFCF(総固定資本形成)の100%を超えてしまっている。さらに、生産活動の損失は一年に生産された商品・サービスの付加価値の約10%になる。また、世界遺産にも指定されている文化遺産やその他環境への被害規模は現状では計り知れない規模であり、今後の調査によって明らかになってくるものと思われる。
2014/2015年度の経済成長率はここ8年間で最低の3%を記録し、地震の被害で前回の経済予測の4.6%の成長から1.5ポイントを超える落ち込みである。主要な産業部門の業績が回復してくるまで、経済損失は2015/2016年度またそれ以降も続くものと想定される。

図1 8 地震被害によるGDPへの影響

Note 1: R (revised); P (projected)
(出典: CBS)

地震の被害によるマクロ経済へ与えた影響を業界毎に見てみると、
① 不動産業
地震で不動産業界(賃貸・各種サービスを含む)が被った被害は甚大で、年間成長予測が下方修正され、4.8%から0.8%に落ち込んでしまった。個人所有の建物から公共の施設にいたるまで、崩壊などによる被害金額で約3,000億NRsが見込まれる。住宅、不動産ローンなどの貸付を行っていたこともあり、銀行などの金融機関はローン部門が影響を受け、財務の健全性の数字が落ち、貸付を行う際の審査も厳しくなっている。
② 保険業
保険業界は全体で160億NRsの保険請求を受けている。大部分は外資が再保険しているが、それでも国内保険会社が負う負担は大きい。
③ 農業
地震の発生以前より、米とトウモロコシの収穫量は予想を大きく下回っていた。そこへ、今回の大規模地震が更なる追い打ちをかけ、収穫、貯蔵していた穀物が失われ、また農業全体の23%を占める家畜業を直撃した。約17,000頭の家畜牛、さらに約40,000頭のその他の家畜動物が被害に遭い、成長予想を2.2%から1.8%に下方修正した。

④ サービス業
観光業も地震の大きな被害を受けた。年に2回ある観光シーズンの一回目に地震がネパールを直撃し、その後約9割の外国人観光客が旅行をキャンセルするといった事態である。地震及びその後続いた余震によって、観光資源であるカトマンズにある10ヶ所の世界遺産(地震による大きな被害は7ヶ所)、および世界的に人気の高いトレッキングコースが被害を受け、観光関連のサービスが提供できず、観光支出も減り、今後2年間で620億NRsの損失が見込まれている。
⑤ 教育
教育業界では、校舎の崩壊や破損により多くの学校が長い間サービス活動が中断された。一方、震災によりストリートチルドレンが増大し、教育機会を奪われている。更に教員も震災のために就業機会を奪われており、健康関連サービス(GDPの1.7%)は大幅でないが成長を記録した。サービス業で付加価値アップに最も貢献したのは卸売業、小売業である。また、ネパールでは女性が貿易活動の場で活躍し始めており、サービス業の種類によっては多くの女性が影響を受けている。
⑥ 大型製造・建設業
平原地帯にある大型の製造業者には直接的被害はなかったが、需要減、離職者増といった二次被害に見舞われた。
建設業界では、地震発生後、その影響下にある建設中の現場においては、現場作業をストップせざるを得ない状況に陥った。電力業
電力セクターへの被害としては、水量増加の恩恵もあり、地震後の発電量はそれほど落ちなかったが、水力発電施設で被害を受けた合計損失容量は5MW である。
⑦ 財政・金融
国の歳入は地震発生後に大打撃を受け、2015年度の歳入目標である4,230億NRsに届かった。そのため2015/2016年度の予算計画に大きく影響を及ぼし、地震発生前の計画では2016年度は5,120億NRsの歳入を見込んでいたが、それを4,600億~4,800億NRsに下方修正し寝ければならない状況となっている。
国の主要な収入源のうち、関税及び非課税収入が落ち込んでおり、これは自動車などの贅沢品の輸入が減少したことが原因となっている。
また、債務持続可能性分析によると、現状は、現在の低債務率を維持できる見込みであるが、債務率が上がらないように常に監視し、債権先の譲歩を含むサポートが必要である。
広義流動性は17.5%以上にはならず、またインフレ率も2014/2015年度は一ケタ台に収まっているが、しかし、地震後の復興需要が増加するにつれて、インフレ率の差がセクター間で広がり、2015/2016年度は予算枠の拡大、供給側が対応できず、インフレ率は拡大傾向で推移し、さらに、熟練、非熟練両方の労働者賃金が上昇する傾向である。
⑧ 輸出業
地震発生により輸出向けの産業は大きな被害を受け、さらに、通常は輸出向けの商品を震災後には国内消費向けに振り替えている商品が増加している事から2015年度の輸出量は前年比約6%の減少が見られる。一方、輸入量については、機械部品、食品、薬品、建設材料の需要が伸びている。
また、世界的な石油製品の価格下落の影響が、2015年度の輸入金額上昇を抑えている。
なお、2015年度は国際送金による受け取りが増えているが、しかし、震災の影響で消費が増大していることから、貿易不均衡は2015年度及び2016年度で悪化することが予測されている。
輸出は投資環境が不明瞭なため急速には伸びていかず、一方輸入は2015/2016年度で18%増加を見込んでいる。
現在ネパール政府は困窮する国家財政の現状から、震災復興に必要とされる費用を諸外国からの支援を要請することを決定し、2015年6月に開かれた国連復興支援国際会議においてこの支援要請が受託された。この復興支援は各セクターによって様々だが、今後数年に渡って合計6,690億NRs(67億USドル)が必要であると見積もられている。
なお、国際社会からの復興支援は、以下の項目に優先度が与えられ実施されることが決まっている。
1)震災により崩壊や破損した学校や病院の再建、道路、エネルギー、水道設備などのインフラの補修や再建。
2)震災により崩壊した住宅の建て替えや補修に対する補助金の支給。
なお、政府は復興計画の中で、再生・復興の局面では、国民の意識を高めると共に、「より良い復興」(Build Back Better:BBB)の主義・考え方に従い、更なる災難が発生するリスクを減少させることが重要である、としている。

表 1 4 セクター別復興金額
SECTOR Total Needs
(NPR million) Total Needs
(US$ million) Share of
Needs by Sector
Social Sectors 407,747 4,077 60.90%
Housing 327,762 3,278 49.00%
Health 14,690 147 2.20%
Nutrition 5,036 50 0.80%
Education 39,706 397 5.90%
Cultural Heritage 20,553 206 3.10%
Productive Sectors 115,618 1,156 17.30%
Agriculture 15,561 156 2.30%
Irrigation 467 5 0.10%
Commerce 20,051 201 3.00%
Industry 7,357 74 1.10%
Tourism 38,710 387 5.80%
Finance 33,472 335 5.00%
Infrastructure Sectors 74,266 743 11.10%
Electricity 18,586 186 2.80%
Communications 4,939 49 0.70%
Community Infrastructure 4,450 45 0.70%
Transport 28,185 282 4.20%
Water and Sanitation 18,106 181 2.70%
Cross-Cutting Issues 71,873 719 10.70%
Governance 18,442 184 2.80%
Disaster Risk Reduction 8,204 82 1.20%
Environment and Forestry 25,197 252 3.80%
Employment and Livelihoods 12,547 125 1.90%
Social Protection 6,398 64 1.00%
Gender and Social Inclusion 1,086 11 0.20%
Total 669,505 6,695  
(出典:Estimations by PDNA Team)

③国際救援活動
ネパールからの要請に応えて、現在34カ国、134の捜査・救援チームが救援活動に参加している。ネパール内務省の報告では捜査・救援のために4,236回ヘリを飛ばし、合計で7,756名を空から救助し、陸上からは4,689名を救ったという。また、被害者に対して緊急人道的支援を行われたが、これは60カ国を超える国々、国連やその他国際組織が大きな役割を果たした。また国連の呼びかけで今までに約1.3億ドルの支援金が集まっている。
日本政府もネパールとの伝統的な友好関係及びネパール政府からの要請を踏まえ、緊急援助物資の供与及び1,400万ドル(約16.8億円)の緊急無償資金協力の実施に加え,国際緊急援助隊(救助チーム,医療チーム,自衛隊部隊)を派遣し、被災者に対する緊急人道支援を実施した。更に、2015年12月には緊急支援として140億円の学校再建、120億円の住宅再建支援に関する円借款を決定した。

(3)教育セクターの被害概要
教育セクターにおける損害・損失額の合計は313億NRsに上る。また被害の80%以上が先に示した14の郡に集中している。教育関係のインフラや実物資産の損害額は280億NRsで、損失額は32億NRsである。公立/私立で分類すると、公立学校が全被害の90.2%を占めている。教育レベルで分けると、就学前教育、基礎教育、中等教育レベル(G1-12)の学校が全体の92%に及ぶ損失・損害額となっており、高等教育(大学レベル)が7.9%、そして技術系・職業教育及び訓練施設が1.6%の被害となっている。その他、コミュニティ学習センターと公立図書館も地震の影響を受けた。上記の被害評価額は下限で見積もられているが、これは私立学校の被害が過小報告されていること、被害報告の取り組みに限界があること、様々な費用を控え目に計算していることが影響している。
被害地域における教育は地震によって中断を余儀なくされており、この中断は今後の入学者数、出席者数、効率的な学校運営に大きな影響を与え、その結果学校へ通えない生徒の数が増加することになるであろうと思われる。また、学校へアクセスできない障害や重症の子供の数が増えることや、両親や家族を失い保護者のいない児童の増大につながっている。
他方、家庭内外での仕事の重要性が高まっている事から、働くために学校に通う日数が減ったり、行かなくなったりする(特に高学年の)子供の数が増加することも考えられ、このような状況が、子どもの学習意欲を奪ってしまう可能性もある。したがって、短・中期の観点では、震災を受けた学校の生徒は成績悪化が危惧される。

表 1 5 地震による教育セクターの被害状況
Subsector Disaster Effects
(NPR million) Share of Disaster Effects
Damage Loss Total Private Public
ECD 402 12 414 302 112
School 24,642 3,191 27,833 1,162 26,671
TVET 487 7 494 10 484
Higher Education 2,430 42 2,473 891 1,582
NFE/LLL 23 1 24 – 23
General Governance and Administration 79 2 82 – 82
Total 28,064 3,254 31,318 2,365 28,953
(出典:Post Disaster Needs Assessment/NPC)

震災による教育セクターの復旧・再建にかかる費用は、トータルで397億NRs(3億9,710万ドル)と見積もられ、この内51億8千万NRs(5,180万ドル)が復旧活動に、3,450億NRs(3,450万ドル)が再建費用である

表 1 6 教育セクターの復興金額
会計年度 (NPR million) Total
2015-16 2016-17 2017-18
Recovery activities 4,559 164 461 5,184
Reconstruction activities 1,785 13,840 18,897 34,522
Schools 1-12 1,574 12,595 17,319 31,488
Technical 31 205 277 513
Higher Education 113 902 1,241 2,256
NFE 3 11 12 26
Administration 64 125 49 238
Total 6,344 14,003 19,358 39,706
(出典:Post Disaster Needs Assessment/NPC)

その内容としては、震災後の一時的な学習環境の整備(特に基礎教育に関する仮設教室の設定)、教科書や学習資料の配布、瓦礫などの処理、などが挙げられ、更に、既存施設の構造診断の実施、再建計画の作成などが必要となっている。
なお、ネパールは初等教育レベルの入学者数では男女で差はないが、中等教育や高等教育では女子が男子に比べて大きなジェンダー格差がある。震災後の生活に苦しむ家庭では、生産活動を手伝うために女児が学校をやめざるを得ないケースもある。
更に、震災により新たに発生した孤児、貧困に苦しむ家庭の子供、また障害のある子供については特別なニーズを考慮し、既存の制度設計を活用し更に、この制度を改善していく必要がある。

図2-9震災により崩壊した教室
       

図2-10学校責任者から説明を受ける地震時の状況
       

8)児童を取り巻く環境
(1)児童労働の定義
国際労働機関(ILO)では国際条約での規定の中で、ILO138号に児童労働の定義を、「原則15歳未満の子どもが大人と同じように労働する」としているが、開発途上国については例外措置を認めており、ネパールでは国内法で14歳未満と定義されている。
また、ILO はグローバル経済における児童労働の廃止について宣言を行うと共に、IPEC(International Programme on the Elimination of Child Labour/児童労働撤廃国際計画)などの具体的な仕組みやプログラムを導入し、児童労働廃絶に向けて取り組んでいる。
これらの内、ILOは「Child labour(児童労働)」と「Child work(子どもの仕事)」の違いを以下のように判別している。
 「児童労働」は子どもの教育を妨げ、健康的な発達を妨げ心身に有害・危険なもの(危険な機械を使うなど)、搾取的・反人権的なもの(低い賃金、買春、債務労働、子ども兵士など)をいう。
 「子どもの仕事」は、子どもの健康や教育に良い、子どもの年齢や成長に見合った家や田畑での手伝い、新聞配達など、健康的な成長を助け責任感や技能を身につけることができる仕事をいう。
さらに、ILOでは児童労働の「最悪の形態」について、として以下の4点を定義している。
① 「奴隷労働またはそれに類似した行為」
債務労働(特定の債務に縛られ不特定の期間に渡って弁済するため労働)、武力紛争への強制的徴用、児童の人身売買など。
② 「性的搾取」
売春やポルノ製造、わいせつな演技のための児童の使用
③ 「不正な活動に児童を使用すること」
麻薬の密売・生産、犯罪の手引きや取引など
④ 「児童の健康、安全、道徳を害する労働」
危険有害業務、深夜業、坑内労働など
これは「18歳未満」の子どもすべてを対象としている。

(2)児童労働対策
ネパールでは、1990年にILOの国際条約「子どもの権利条約」を批准し、その後、1992年に児童法を定め、14歳以下の児童の労働を禁止した。
この法律では規定年齢以下の子どもを雇用した場合には3カ月以内、危険な労働や子どもの意志に反して働かせた場合には1年以内の禁固を規定している。
また、1999年には児童法を改訂し、虐待や麻薬、アルコールの販売・流通等をさせることを特に禁止することで児童法の強化を図っている。
さらに、2004年には児童労働問題に取り組む「児童労働ナショナル・マスタープラン」を策定している(National Master Plan on Child Labour 2004-2014:労働運輸省/現在は労働雇用省)。このマスタープランでは「ネパールにおける最悪な形態の児童労働」として
① 債務労働
② ゴミ収集(ゴミ漁り)
③ 荷運び人(ポーター)
④ 家事労働(都市部)
⑤ 鉱山労働
⑥ 絨毯部門労働
⑦ 人身売買
等を挙げている。
また、このマスタープランでは最悪な形態の児童労働は2009年までになくし、その他の一般的な形態の児童労働は2014 年までになくすという目標を設定し、これに取り組む行政上の仕組みも構築した。
その他に政府は、2001年にカマラリ労働を禁止する方針を明確にし、カラマリ少女たちを解放する政策を確立させた。
その後、2010年には「児童労働禁止ガイドライン」、2012年には、児童の人身売買に取り組むための『ナショナルプラン』(National Plan of Action against Human Trafficking)を策定し、施行している。
なお、2004年のマスタープランでは、働く子どもの問題については、児童法(1992年)に基づいて設立されている女性児童社会福祉省-中央児童福祉委員会(Central Child Welfare Board:CCWB)を通してその解決を図っていく事とした。

(3)地方行政の関わり
ネパールの地方行政は、大きく5つの開発地域(Development Region)に分かれており、行政区としては、75の郡(District)と、その下部に58の市(Municipality)と3915の村(Village)が設置されている。
CCWBでは、各郡に郡児童福祉委員会(District Child Welfare Board:DCWB)を設け、さらにその下部に58の市(Municipality)と3915の村(Village)に各々児童保護委員会(Municipal/Village Child Protection Committee:CPC)を設置する計画である。これら3つの委員会組織では児童福祉や子どもの権利保護についてお互い連携することで対応する仕組みである。
しかし、資金不足や人材不足によりその行動範囲は限定的となっており、郡以下の地方システムはほとんど機能していないのが現状である。さらに、インフォーマルセクターをカバーしていないため、公式発表されていないブラックボックスが存在している可能性は否めないのが実情である。
一方、労働運輸省においても2014 年までに児童労働を廃止するという目標を立ててきたが、未だ児童労働に対する社会問題は、その解決の糸口を模索しているといった状況にある。

図2-11農作業を手伝う児童

図2-12破損した教室で授業を受ける児童たち

図 2 13 System for Child Care in Nepal

(出典:National Plan of Action for Children、Nepal 2004/05-2014/15、Ministry of Women, Children and Social Welfare)

(4)児童労働の現状
国際労働機関(ILO)の報告によれば世界の5~17歳までの子供の内、小学校に行くことができない子どもは約7,200万人であり、その大部分が開発途上国に集中していると標記されている。また、世界の成人人口の16%に当たる約7億5,900万人は基礎的な能力(読み書き・計算)を持たないと推定されており、その最大の理由は貧困であると報告されている。
国際社会は、2015年までにすべての子どもが学校に行くことを目指す「万人のための教育」の実現に向けて多様な取り組みを行ってきたが、2015年になっても世界では7人に1人が児童労働の中にあり、数千万人もの子どもが就学できていないのが現状であり、これは、ネパールでも例外ではない。
ネパールでは、2008年に労働事情の調査を実施し、さらにILO/ネパール中央統計局(CBS)はネパールで暮らす5歳から17歳までの子供たちの活動を『NEPAL CHILD LABOUR REPORTネパールの児童労働報告書』(2012年)としてまとめた。
この報告書では、ネパールの5~17歳の子ども人口は777万人で、全人口比約33%に相当する。この内「働く子ども(Working Child)」は、約314万人(40.4%)で、さらにその内、「児童労働(Child Labour)」のカテゴリーに入るのは、約160万人(児童5人に1人)で、「危険な労働」のカテゴリーに入るのは62万人となっている。その数値は、子供人口全体の8%に相当する。
また、働く子供を男女別に見てみると、女子47.6%、男子36.1%であり、さらに、危険な労働では、女子が半数以上を占めている。
子供が働いている主要分野としては、農業が過半数を占め、農村地域では、子供は家事で重要な役割を果たしている。この農村地域では子供が穀物や野菜の取入れや、家畜の世話、井戸の水くみ、幼い弟や妹の世話などで両親を助け、「支払いの伴わない家事労働」が常態的になされている。
製造業の中では、カーペット産業に児童労働者が最も多い。カーペット産品は、ネパールの主要な輸出品であり、全輸出額の60%を占めている。この産業には、40万人の労働者がいると言われるが、その30%が15歳以下の子供達だと推計されている。また、その労働条件は劣悪であり、90%以上の児童労働者は一日15時間以上を低賃金で働かされており、更に、紡績工場では労働者は羊毛のくずで肺を病み、繊維工場では皮膚病におかされているとの健康被害も報告がなされている。
子供がカーペット産業に従事する理由は、単に家庭の貧困だけではなく、家庭の無理解、非識字が関係している。ネパールの人口の約8割が農村部で生活をしているが、農業では4-5か月しか働けない。残りの期間は都市部に出て、レンガやタイルづくり、建設業で働いており、この時に子供たちも同行して都市部へ移動し、カーペット産業で働き、そのまま都市に居残って働き続ける。また、農村部ではしばしば、親は子供が生まれると、生涯子供の世話になるのが当然と考え、子どもが10歳頃になると、学校ではなく工場へ行かせることもある。
子供達はカーペット産業の他に、炭坑夫(坑内労働)、砕石工、煉瓦工、衣料品縫製、紅茶・コーヒー・さとうきび工場、荷物担ぎ、道路建設、皿洗い、中産階級から裕福な家庭の召使、ごみあさり・くず拾い、など多種多様な形で働かされている。
学校教育の側面から見てみると、ネパールでは777万人の子供人口の内、就学率は91%と高く、学校に全く行ったことのない子供は9%である。しかし、就学した子供の59%は中退などにより小学校を終えていない。更に、小学校を卒業した子供は、その後、上位校(高校を含め)に進んでいるのは3.4%に過ぎない。

図 1 14 Situation of children in Nepal

(出展:NEPAL CHILD LABOUR REPORT2012/ILO・CBS)

表 1 7 5 歳から 14 歳の子ども活動状況

(出典:Nepal Living Standards Survey 2010/11 Statistical Report Volume Two /CBS)

表 1 8 子どもの就労時間の割合

(出典:Nepal Living Standards Survey 2010/11 Statistical Report Volume Two /CBS)

また、UNDO人間開発報告書2015では、心身をむしばみ、また搾取するような児童労働は人間の尊厳を損なうと提言しており、世界的に見ても、児童労働、強制労働、人身取引による労働など基本的人権を侵害し、虐待的・搾取的条件の労働をしている児童が多数存在するとしている。また、家庭内労働、出稼ぎ労働、性産業での労働、危険な業種の労働に就く児童は様々な危険に直面しており、全世界での児童労働は約1億6800万人に上り、子ども人口全体のほぼ11%に相当すると報告がなされている。(World Bank 2011)。

ネパールでは、約160万人の子供が児童労働(CHILD LABOUR)を課されており、その内、62万人の子供が「危険な労働」の対象となっている。また、ストリートチルドレンと称される子供が約10万人であり、これに対して、現在子どもケアホーム(CCH:Child Care Home)に入所している子どもは、政府や民間で運営されている全国585のCCHに、合計15,811人(男7,973と 女7,838)の子供が収容されているに過ぎない(後述参照:児童養護施設の分布)。つまり、現在、ストリートチルドレンや児童労働、危険な労働に従事している子供のほとんどは、無策で手つかずの状態である。

(5)児童教育の現況
ネパールの貧困家庭では、両親が少ない収入を得るために過重労働を余儀なくされており、そのため家庭の事柄については子供が担うことが大きい。その結果、子供は学校に通学するよりも自宅で何らかの労働に従事していることが多い。したがって、貧困家庭では教育の優先順位は低くなり、これらの子供達の就学に下記のような悪影響及ぼしている。
 毎日の仕事や手伝いで忙しく宿題をする時間がない。
 農繁期には手伝いのため学校には行けない。
 学校の規則的なスケジュールに合わせて動くことができない。
 夜間に時間があっても家に照明がないため宿題ができない。
 家庭内に教育を受けている親族が少なく、子供の宿題や勉強を手伝うことができない。
 過重労働のために、学習に集中できない。
 宿題ができないので学校を休みだす。
 学習が疎かになり、定期的に行われる試験にも影響がおよび、留年しなければならない
 学力が落ち、学校を退学せざるを得ない。
 地理的な遠隔地、農村地域の貧困家庭の子供達は時間的制限、物理的障害もあり、年々学校へ通学しなくなり、この事から将来の成人非識字者の増大に繋がっている。
 貧困による捨て子、事故により両親を亡くした子供、売買された事により就学が阻まれ、売買先からの逃亡した子供達が都市に流入し、保護者のないストリートチルドレンとなる。
ネパールでは、このように児童の教育に対する劣悪な環境を政府の積極的な教育施策等により、改善傾向を見せてはいるが、教育の低さや無知が貧困を呼び、貧困が教育の機会をなくす悪循環は、未だ断ち切れず残されている。
ただし、ネパール経済にとって重要なインフォーマル経済は子供たちの労働に大きく依存しており、子供の労働は悪である(児童労働)というアプローチでは経済破綻を招きかねず、人々の賛同や参加を得られにくい。
ネパールの子どもたちが置かれているこのような特殊事情を考慮すると、この国の子どもの半分を占める「働く子ども」の待遇改善という観点からアプローチする必要性もある。
つまり基礎教育とよりよい働きを確実に身に着けさせる方法を見出すことが必要である。

(6)児童労働に対する考察
ネパール政府は、子どもの権利を守り、児童労働の問題に取り組むために、多くの法的措置を打ち出してきた。1990年、ネパール憲法において児童労働は間違いであり、撲滅するための措置をとる必要があると明確に謳い、それは、1992年より種々の法律・規制に反映され、2000年の児童労働を禁じ、働くことのできる年齢を14歳からと定める児童労働法へと結実した。またネパール政府はILO(国際労働機関)条約No.138、No.182、加えて職業別に働くことが許される年齢基準を定めたILOの関連条約を批准している。
もちろん、こうした法律的措置だけでは児童労働の複雑な問題に対処するには不十分であり、実際、この児童労働法もすべての児童労働を非合法であると規定しているわけでなく、ILOが定めている雇用最低年齢の17歳というガイドラインとも合致していないなど、今後の見直しが必要とされている。
そこで、これらの法的措置に加えて、問題の根本に横たわる貧困、不平等といった課題を具体的に取り扱う社会的・経済的措置が構築される試みが必要とされてきた。
しかしながら、ネパールでは政治的騒乱で先の見えない状態が続き、国の経済や社会に悪影響を及ぼす武力衝突も生じた。こうした混乱の中で地方では何千人もの人々が家を失い、またその結果貧困が広がり、特に女性や子供が苦しんできた。
この児童労働問題の解決に向けた政策については、雇用促進策、子供の義務教育化策、学校入学時の補助金政策、また成人のための識字率向上策などの多くが考察されてきたが、最も有効な手段として検討、実施されなければならないのが、基礎教育であり、それは、社会変革の土台となりえるからである。
また、近年の学校の就学率は飛躍的に改善しており、ジェンダーおよび地域の格差も縮小傾向にあり、更に、5歳から17歳の子供たちの学力改善度合いは調査結果からも向上している傾向がみられ、現在中学校レベルまでを義務教育化しようと推進しているが、しかし、未だ多くの家庭が金銭的に子供を学校に通学させる余裕がなく、そのような家庭の子供たちは学校に通っていない。
なお、ネパールは国際的にみると依然として識字率の最も低い国の一つとして挙げられており、これは、多様な民族文化、多言語使用などの影響もあるが、高い文盲率と中退率は教育システムが正常化されていないことを意味する。
ネパールの小学校の中退率が高い事については、子供たちが学業と労働を両立させなければならないという環境を強いられていることが大きく起因しており、また、国民のこの問題に対する認識の低さも就学率が低い要因になっている。
教育の義務化はこうした背景を打開する一因となることにもつながると考える。
本来、子供の教育は親の収入の高低によって妨げられるべきものではなく、様々なタイプの教育(公式、非公式、職業訓練など)が必要とされる現状の中で、教育に対する現状の改善政策を打ち出し、ネパールの将来のため、また人々を貧困から解放するための方策として財政出動することは必然である。
その具体策としては、要援護児童を保護し、今後のネパールを担っていく子供として、その生活環境を整え、適正な教育を享受できるようにし、貧困の世代循環を遮断し、国家レベルで根本原因の解決に取り組む必要があると考える。


9)教育セクターの現状
(1)教育開発への取り組み
ネパールにおいての学校教育制度の歴史は、近代国家の構築を開始した1951年を始まりとして、これまでに様々な教育開発に取り組んできた。教育は国家建設のための重要な要素として捉え、その変遷は時代とともに様変わりしてきたが、1971年には国家教育制度計画(National Education System Plan:NESP)が施行され、1977年には小学校の授業料が無償化、翌年には教科書も無償化され、初等教育に重点を置いた政策を打ち出している。
近年においては、1990年にタイ国で開催された国連の「万人のための教育(EFA)世界会議」において採択された「万人のための教育宣言」の行動の枠組み、そして前述の1990年に批准した「子どもの権利条約」を背景に、『初等教育とは基本的人権と貧困の撲滅の2つの側面から定義づけられなくてはならない』とした。さらに、あらゆる施策のなかで初等教育を優先的に扱い、国内のカースト/エスニック・グループに対して平等に教育支援を怠らないよう努める方針を固めた。

表 1 9 近年の主な教育施策
年 施策名 主な内容
1991~2001 The Basic and Primary Education Master Plan 「万人のための教育(EFA)に基づく行動の枠組み」を受け、2000年までに初等教育の普及、識字率の向上をめざすための計画
1993~1998 The Basic and Primary Education Project (BPEP) 学習機会や学習状況の改善を促進するための計画。内容は、初等教育のカリキュラム開発、教科書・指導者用の教材・補助教材の開発、学校や情報センターの建設、ノンフォーマル教育プログラム開発、女性のための教育プログラム等。
1999~2003 BPEPII
2001~2015 Education For All National Plan of Action (EFA NPA) 2015年までに就学率・識字率の100%達成、及び教育におけるジェンダー是正を目標にした国家行動計画
2003~2007 Secondary Education Support Programme (SESP) 「国家開発のニーズに整合した中等教育の拡充」を目的とする計画
①中等教育の質の改善
②女子生徒の就学機会拡充
③中央・郡レベルの能力強化
2004~2009 Education For All(EFA) EFA NPAに基づいて策定・実施されている初等教育開発の5カ年計画
①初等教育の公平な就学機会の拡充
②教育の質の改善
③各教育機関の能力強化を通じた教育マネジメントの効率化
2009~2015* School Sector Reform Programme(SSRP) EFA NPA、3カ年暫定計画、SSR Core Documentに基づき、EFAやSESP等の後継プログラム
①初等教育と前期中等教育の基礎教育としての統合
②実行責任の組織化
*平和構築プロセスの下で政権争いが続き未だ政情が不安定であったこともあり、当初の7年間では多くの目標が達成されなかったことから、2014/15年度から 2016/17年度まで2年間、SSRPの期間が延長された。

(2)SSRPの概要
前述したとおり、ネパールでは教育セクター開発としてSchool Sector Reform Programme(SSRP)に取り組んでいる。これは、ネパールにおける教育改革のための戦略的な枠組みとしての長期的教育計画であり、特に教育サービスの質と効果の向上を目指すプログラムである。その上位ゴールは「人材の持続的な能力強化による社会・経済発展への貢献」を設定し、さらに大枠の基礎教育及び中等教育の目標として「2015 年までに就学率・識字率の100%達成、及び教育におけるジェンダー格差是正」がEFA国家行動計画計画(EFA National Plan of Action2001-2015)で掲げられている。そのため、その達成をめざしてEFAプログラムやSecondary Education Support Programme(SESP)を過去に実施してきた。SSRPは、その後継プログラムでありながらも、学校教育の構造改革・教育の質の向上・遂行責任の制度化にみられる戦略的インターベンションによって特徴づけられた新しい内容も導入している。
SSRPは、School Sector Reform(SSR)Core Document や国内のさまざまなレベルで開催されたステークホルダーコンサルテーションにおけるフィードバックをもとにMOEによって作成されている。また、その内容は教育の権利、男女平等、インクルージョンや公正性等の重要な政策上のゴールや価値観に基づいており、SSRPの戦略的インターベンションのなかに融合されている。
SSRPのプログラムフレームワークは下記のとおりで、目的達成のための上位ゴール、目的そして8つのコンポーネントとそれぞれの目標で構成される。さらに、8つのコンポーネントの下には、更に戦略的インターベンションや活動の計画が策定されており、実際の年間レベルでの活動の実施は年次戦略実施計画(ASIP)に従って行われ、そのASIP の内容に基づいて予算及び活動執行率が四半期ごと、また半年ごとに行われる会議にてレビューされる。
表 1 10 SSRPフレームワーク
上位ゴール 持続的な人材の能力強化により社会・経済発展に貢献すること。
目的 すべての市民が機能的識字者となり、生産的な生活を享受するのに必要な基本的なライフスキルや知識を身につけること。
コンポーネント 目標
1.就学前教育 4歳の子どもたちが基礎教育の準備をするための質の伴った就学前教育へのアクセスを拡大すること。
2.基礎及び中等教育 5歳から12歳のすべての子どもたちに公正なアクと質の伴った基礎教育を確保すること。
中等教育のアクセス、公正さ、質そしてそれらの関連性を高めること。
3.識字と生涯教育 若年層と成人の機能的識字と基礎的な能力を高めること。
4.技術教育及び職業(TVET)トレーニング 中等教育レベルの生徒たちが技術や職業スキルを身に着けること
5.教員の専門性開発(TPD) 生徒たちの学習の過程をより促進するために、教員の保持資格や専門的能力を高めること
6.能力強化
(Capacity Development:CD) MOE による業務実施システムのパフォーマンスを向 上させ、重要な改革を実施する能力を開発させること。
7.モニタリング・評価(M&E) プログラムの投入、プロセスやアウトプットをモニタリングし、プログラムのインパクトを評価すること。
8.援助マネジメント SSRP実施のために利用可能な援助の効率性と効果を高めること。

(3)教育制度
ネパールでは、EFAの思想のもとSSRPにより教育制度改革が実施され、初等教育(1~5学年)と前期中等教育(6~8学年)が統合され、基礎教育(1~8学年)となった。基礎教育の対象は5~12歳、中等教育は4学年で13~16歳を対象とし、就学前教育を除くと中等教育までの学校教育は計12年とされている。学年度は4月から3月である。
また、小学校への入学率向上、児童の学校環境へのスムーズな適応などを目標として、それ以前にはシステムの中になかった就学前教育(Early Childhood Development:ECD)も組み込まれ、普及に力を入れている。

図 1 5 Education Structure in Nepal

(出典:Nepal Education in Figures 2012,Ministry of Education)

(4)学校の種類
①正規学校教育
ネパールの学校は、その性質上の区分で正規学校教育と非正規学校教育とに区分されている。
正規学校教育では、大きく分けて、公立(Community Schools)と私立(Institutional Schools)に分類される。
また、公立のCommunity Schoolsは運営管理等の仕組みによって、形式的に3種類に分類される。
① Community Aided Schools(政府認定・管理校)
② Community Un-aided Schools(設立当初はコミュニティによる学校設立後、政府から予算の全額が支払われない学校を意味したが、現在は全学校に予算が全額支払われており、実質的には機能していない)
③ Community Managed Schools(コミュニティが学校マネジメントの運営責任をもつ契約を政府と締結した学校であり、コミュニティはコミュニティ学校支援プログラム(Community School Support Programme:CSSP)と呼ばれる1 回限りの補助金を受け取ることができる)

②非正規学校教育
非正規学校教育では、宗教教育、オルタナティブスクールの2種類が存在する。
宗教教育は3種類に分類され、それぞれ宗教コミュニティによって運営されている。
① Gumba(仏教僧養成のための教育)
② Ashram(ヒンドゥ僧養成のための教育)
③ Madrassa(イスラム学者養成のための教育)

また、オルタナティブスクール(Alternative Schooling Programme:ASP)は、ユニセフの支援のもと目的別に2種類に分類されている。
① Flexible Schooling Programme(6年生まで学校に通っていない、または初等教育を中途退学した8~14歳児を対象に教育期間は3年間)
② School Outreach Programme(地理的理由で初等教育を受けられない6~8歳児を対象に教育期間は3年間)の2種類に分類される。

FlashⅠレポート(2014~2015)によると、現在ネパールには基礎教育レベルで 33,611校の学校があり、そのうち公立校(Community Schools)は 28,236校、私立校(Institutional Schools)は5,375校、残り895校が宗教学校(Madrassa:745、Gumba/Vihar:78、Ashram/Gurukul:72)である。

図 1 16 ネパールでの学校の種類

(5)教育行政
①教育行政組織
ネパールの教育行政は、教育省(MOE)の管理下において中央および地方の関係機関で執行されており、教育省は大臣の下に2名の事務次官(基礎教育担当1名、それ以外の教育担当1名)が省内の統括を行っている。教育省内には①管理部、②高等教育・教育管理部、③計画部、④モニタリング・評価・監督部が設置されている。

図 1 17 教育省組織図

(出展:MINISTRY OF EDUCATION: A glimpse 2010)

教育省の下部組織として、中央レベル、地域レベル、郡レベル、地元レベルでそれぞれ組織化されており、また委員会、大学、協議会、図書館などがある。
基礎教育においては、主にDepartment of Education (DoE):教育局 (中央レベル)およびDistrict Education Offices(DEO):郡教育事務所(地方レベル)が管轄している。
DOEは、1999年当初、Basic and Primary Education Programme (BPEP)の活動を制度化するために設立されたが、現在は地域及び郡事務所への直接的な命令系統を保持し、監督権、予算権、教育プログラムの実施及びモニタリングの責務を担う。DOEは局長:Director Generalにより統率され、①管理部、②計画・モニタリング部、③教育マネジメント部で構成されている。管轄下に5カ所のRED及び75カ所のDEOがあるが、実質的にはDEOが地方教育行政の実務を行っている。

表 1 11 教育省下部組織
SN タイプ 機関
1 Central Level
中央レベル 1. Department of Education (DoE)
2. National Centre for Educational Development (NCED)
3. Curriculum Development Centre (CDC)
4. Office of the Controller of Examination (OCE)
5. Non-formal Education Centre (NFEC)
6. School Teachers’ Record Office (STRO)
7. Education Review Office (ERO)
2 Regional Level
地域レベル 1. Five Regional Education Directorates (REDs)
3 District Level
郡レベル 1. Seventy-five District Education Offices (DEOs)
4 Local Level
地元レベル 1. One thousand fifty-three Resource Centres (RCs)
2. Thirty-two Thousand One Hundred and Thirty Schools and Twenty-nine Thousand Eighty-nine ECD/PPC centres
5 Commissions
委員会 1. University Grant Commission (UGC)
2. Teacher Service Commission (TSC)
3. Nepal National Commission for Education, Science and Cultural Organization (NATCOM)
6 Universities
大学 1. Tribhuvan University (TU)
2. Nepal Sanskrit University (NSU)
3. Kathmandu University (KU)
4. Purbanchal University (PU)
5. Pokhara University (PoKU)
6. Lumbini Buddha University (LBU)
Just approved to open
7. Agriculture and Forestry Science University
8. Mid-Western University
9. Far-Western University
7 Councils/Boards
協議会 1. Council for Technical Education and Vocational Training (CTEVT)
2. Higher Secondary Education Board (HSEB)
8 Libraries
図書館 1. Kaiser Library (KL)
2. Nepal National Library (NNL)
3. Dilliraman Kalyani Regmi Memorial Public Library (DKRMPL)
9 Other
その他 1. Janak Education Material Centre Limited (JEMCL)
(出展:MINISTRY OF EDUCATION: A glimpse 2010)
②地方教育行政(地域レベル、郡レベル)
地方教育行政は地域レベルと郡レベルに分かれている。
地域教育事務所(RED)は教育管理の効率向上を目的として設立された。REDは郡レベルの教育プログラムの均一化、地域における学校レベルの教育内容・活動の調整、モニタリング・監督を行い、全国に5カ所設置されている。
郡教育事務所(DEO)は全75郡に配置されており、MOE、DOE、REDの方針に従い、郡レベルにおける教育開発活動の計画及び実施、教育活動のプロセスの監督及びモニタリングを行っている。DEO(管轄下のRCの活動も含む)の主な職務内容は下のとおりである。
・ 政府の教育政策や計画に基づき、郡内での教育開発プログラムの計画作成、実施〔郡教育計画(District Education Plan:DEP)の作成及び実施を含む〕。
・ RCや学校を監視し、専門的助言を教員、校長及び生徒に与える。
・ 郡内の教育の進捗をモニタリング・評価する。
・ 教員を任命及び異動させ、記録を管理する。
・ 新しい学校の設立及び既存学校の強化をする。
・ EMISデータの収集、学校及び教員の年次・定期的な統計報告書を準備する。
・ 短期の教員研修、ワークショップやセミナーの開催をする。
・ 課外活動を組織化する。
・ 郡レベルの全国統一試験(School Leaving Certificate:SLC)を開催する。
・ NGOやその他の教育プログラムを行う組織の調整を行う。

さらに、学校管理及び監督の業務促進のために、各郡は就学人口や地形的な条件によって3~27のクラスターに分けられており、それぞれのクラスターにはDEOが管轄するリソースセンター(Resource Centre:RC)が設置されている。現在全国には1,053のRCがあり、RCにはクラスター内の教員たちのなかから選出されたリソースパーソン(RP)が各1名配属されている。RPはDEOと学校・教員をつなぐ役割として機能しており、その活動内容は視学官(School Supervisor:SS)により監督また評価されることとなっている。RPの業務内容は以下のとおりである。
・ 管轄地域の全学校の計画作成・実施支援とRCレベルの年次計画の作成及び実施。
・ 全学校(特別学級のある学校を含む)のモニタリング(カリキュラム、教科書、教員ガイドが学校にあるかの確認も含む)とDEOへの結果報告
・ 教育関連データの収集、管轄地域の学校と教員情報の更新
・ モデル授業のデモンストレーション実施
・ 教員の授業視察
・ 教材作成やピアティーチングの実施
・ 教育の質向上のための環境、施設、人材のモービリゼーション
・ RCレベルでの教員・校長・SMC/PTAメンバー、保護者対象の短期研修、セミナーやワークショップの開催
・ RCレベルでの管轄地域の校長や教員との定期会議の開催
・ RCレベルでの現職教員研修開催
・ 課外活動の計画
・ ノンフォーマル教育に係る活動のモニタリング及び支援・村落レベルにおける識字キャンペーン委員会(Village Literacy Campaign Committee:VLCC)の形成
・ コミュニティモービリゼーション
・ 郡レベル会議への参加
・ さまざまな活動間及び組織間の調整

ネパール政府は、民族・カースト等の多様性を抱える自国において地域のニーズに合致した教育を提供する目的のもと、教育の地方分権化を推進している。地方教育行政および住民参加による運営体制改善に伴う制度設計を一定の形で整備してきたものの、地方行政や学校レベルの人材能力及び予算不足等から、その効果は未だ限定的で途上段階にあり、教育格差を埋めるまでには至っていない。

③ 学校レベル
① 学校運営委員会: SMC
教育法では、学校が認可を受けるためには学校運営委員会(School Management Committee:SMC)を設置することが義務づけられている。公立校と私立校ではSMCのメンバー構成は異なるが、公立校ではSMCは10名のメンバーからなり、任期は2年間、メンバーのうち4名(Chairを含む)は学校に通う児童/生徒の保護者のなかから選挙で選出するという規定がある。保護者とは、学校に通う児童/生徒の父、母、姉、兄、祖父母、学校に通う児童/生徒を扶養している人物、児童/生徒の通学支援者のいずれかとされている。
教育規定に基づくSMCの役割は、学校の経営・維持・管理・運営(学校改善計画:School Improvement Plan:SIPの作成及び実施を含む)、学校運営に必要な資金の手配、教材の調達、教員の採用(教員免許を既に取得している候補者に限る)や出席のモニタリング、学校施設の整備・維持管理、学校の年間予算の承認とそのDEOへの報告、指定の会計士による学校の監査の実施、学校の施設・会計・教育に関する記録の維持管理等と広範に及ぶ。また、これらの他にも政府により承認されたカリキュラム及び教科書の実施、学校において追加の教科書を使用する際にCDCからの了承を得ること、コミュニティにて採用された臨時教員への給与の支払い、教員の規律違反の際の対処などもSMCの役割に含まれる。

② PTA
学校は、教員全員と保護者をメンバーとするPTA及び最大11名のメンバーによって構成されるPTAのExecutive Committeeを設立する。Executive Committeeは議長、校長、少なくとも1名の教員そして保護者をメンバーとする。Executive Committeeのメンバーの任期は2年間であり、最低3カ月に1度は会議を開催する。PTAはSMCのように学校に対する管理運営責任をもつ組織ではない。Executive Committeeの役割には、教育の質に関する支援や、学芸活動の情報の定期的な入手、関連活動への参加が含まれる。

④教育省以外の教育関係機関
教育省以外のネパールの教育に関連する機関は下記のとおりである。
① 地方開発省(Ministry of Local Development:MOLD)
② 郡開発委員会(District Development Committee:DDC)
③ 郡教育委員会(District Education Committee:DEC)
④ 村落開発委員会(Village Development Committee:VDC)

これらの組織が重要なのは、SSRPにおいても、正規教育だけでなくノンフォーマル教育に関する責務を担うVDCの管轄村落地域における1~8学年の義務教育達成に係る役割が重視されていることで、SSRPでは500のVDCにおいて義務教育の達成が段階的に実施されることとなっている。VECが作成する村落教育計画(Village Education Plan:VEP)と、学校が作成する SIPに基づき郡レベルの教育計画(DEP)が作成される

(6)教育財政
①教育予算の配分
2007年から2011年までの5 年間に国家予算はおよそ 2.35 倍に拡大したが、教育予算は国家予算の伸び率よりも大きい 2.51倍となっている。サブセクターごとの教育予算は、2009/10 年から 2011/12 年の間一貫して基礎教育予算の教育予算に対する割合が 60%を超えているのに対し、中等教育に対する予算の割合は20%を切る水準となっていることから、中等教育以降に対する投入はい まだ低い状態である。
政府は、2015-16年度、教育セクターのために120億RPs以上増額の980億円を投資しているが、昨年の総国家予算と比較して、それは急激な低下である。教育セクターでは、次年度 12.04%に下落、つまり現在の会計年度予算の13.92% を保持しているに過ぎない。教育予算については、2011年-2012年度、教育セクターが初めて予算の17.1%を獲得した時から、継続的に減少しており、5%の減少となっている。10年前、2004年-05年の会計年度に教育セクターが持っていた国家予算は、全体の約16%で、国際的慣行によると、教育セクターにおいて20%を確保することが必要である。

②教育予算の流れ
教育予算は、まず次会計年度でSSRPの実施に必要な予算額が教育省から財務省に提示される。国家の全体予算額がまとまり、そのなかの教育セクターの予算案が財務省及び国家計画委員会(National Planning Commission:NPC)によって承認されると、財務省から教育省に通知され、教育省からDOEに、DOEからDEOへ通知される。通知には財務省が教育省に送付したレターのコピーも会計検査委員長事務所(Financial Comptroller General Office:FCGO)及び郡財務管理事務所(District Treasury Control Office:DTCO)へ発送される。この通知の後、財務省経由で各DEOの銀行口座に資金が振り込まれる。

図 1 18 教育予算の流れ

DEOや学校が資金を受け取るためには、入手する資金が詳細予算書(Red Book)のなかで承認された予算であることを記載する書面、及び詳細の活動内容が記載された書面をDTCOに提出する必要がある。内容が認められれば、学校の銀行口座に入金が行われ、資金の使用が可能になる。
学校レベルへの資金送金は4カ月ごとの活動内容に基づいて行われる。

7)教員
(1)教員マネジメント
教員の配置、研修、異動や昇格等を含む教員マネジメントは教育省及びその下部組織によって行われており、その役割ごとに担当機関がある。

図 1 19 校舎不足のため屋外での授業風景

図 1 12 学校運営に伴う関係機関
事業 指標 関係者 関係機関 活動場所
生徒 教育 ローカル・カリキュラム開発 SIP CDC RED、DEO
識字教育 DDC
技術教育 TVET
教育の質の改善 CDC DEO
継続学習評価
入学改善 Welcome to School RP DEC、VDC VDC
養育 救出 CBWB,DCWB
養育 CCWB,DCWB
教師 能力開発 DEO職員(TOT)
RP NCED ETC(9か所)
校長 HT LCDI MOE人事管理・人材能力強化課、NCED ETC(20か所)
中等教育教師 TPD RP DEO ETC(20か所)
LRC(46カ所)
基礎教育教師 TPD RP DEO RC(1053か所)
就学前教育 ECD,PPC
雇用 TSC、MOLD(DOC,VDC)
DEC、VEC
組織 適正運営 運営改善 SS/視学官 DEO、SMC、PTA、DOE
会計適正化 MOE管理部

(2)教員資格・免許
教員になるために最低限必要な資格は、SSRPにおいて下記の通り定めされている。
① 基礎教育レベル:12年卒業または相当する教員養成コース修了
② 中等教育レベル:教育学修士または相当する教員養成コース修了

教員免許試験を受験するためには上述の教員資格 を所持する必要があるが、教員資格を所持していながらも研修を受けていない候補者は面接試験で合格すれば臨時教員としての職に就くことが許可される。

(3)教員の採用
2001年に改訂された教育法においては、
A) TSC による採用(正規雇用):政府が採用通知を発行し配置の決定
B) SMC による採用(臨時採用):SMCが採用通知を発行しDEOへ連絡
の2通りの教員採用システムが規定されている。

教員の採用は以下の順に従い実施される。
① 空席ポストの公募
② 有資格候補者への試験に係る日時と場所の通知
③ 試験の実施(筆記試験:100 点、実技試験:25 点、面接:25 点)

必要な教員数は現在の就学人口及び予想される就学人口、そして公正な教員の配置に関する政府の規定に基づき決められる。政府の規定による教員1名当たりの生徒数は以下のとおり。
・カトマンズ及びタライ平野:50 名
・Hillエリア:45 名
・Mountainエリア:40 名
・1 校当たりの教員最低人数:3~5 名(就学人数が少ない場合は減員)
(校当たりの教員最低配置人数は、1~3 学年では3名であるが、1~5学年の初等教育、6~8学年の前期中等教育レベルではそれぞれ5名及び4名となっている。)

一方、ネパール政府は2003 年に教員給与の補助金を公立校に支給する政策を導入し、TSCによる正規職員雇用よりもSMCによる臨時教員採用を奨励している。
最初の配属は、学校から教員不足をDEOに報告し、DEOはこれを受けて教員配置をDOEに申請するが、DOEは全国からの教員要請数を取りまとめて財務省等と検討し、採用数を回答する。これは各学校へDEOを通じて連絡される(正規雇用教員の場合)。SMCによる採用の場合は空席ポジション応じて採用した結果をDEOに報告することとなる。

図 1 13 公立校と私立の認可教師数
対象校 公立認可教師数 私立認可教師数
1 初等教育 80,176 47,762
2 前期中等教育 16,224 15,577
3 中期中等教育 12,725 19,584
合計 1,09,125 82,923
(出典:Nepal Education in Figures 2015 At a Glance)

(4)教員の給与
教員の給与体系は、以下のとおりである。

図 1 14 2013年7月16日より適用される給料スケール
No. 評価 給料スケール ※1
給与 G Rate 小計 G 追加給与 合計
初等 1 三つ以上の教科をSLC失敗 12,520 15 88 13,840 2 180 14,020
2 二つ教科までSLC失敗 13,330 15 100 14,830 2 200 15,030
3 SLCに合格 16,110 15 110 17,760 2 220 17,980
4 SLCに合格 17,090 17 120 19,130 2 240 19,370
5 SLCに合格 22,180 15 160 24,580 2 320 24,900
中学校(LS) 1 中学校 12,520 15 88 13,840 2 180 14,020
2 中学校 22,180 15 160 24,580 2 320 24,900
3 中学校 23,340 12 180 25,500 2 390 24,890
後期
中等(HS) 1 後期中等 22,180 15 160 24,580 2 320 24,900
2 後期中等 24,880 12 195 27,220 2 390 27,610
3 後期中等 29,200 11 230 31,730 31,730
※1 2000年4月1日より前に技術系の科目として教員に採用された場合の特別手当
(出典:DOE資料)

(5)校長の選出
教育規定では Community Schoolsの場合、SMCの推薦と規定の基準に基づき、DEOが同等レベルの2名のシニア教員のなかから校長を任命することになる。校長の選出に係る基準は以下のとおりである。

図 1 15 校長選定基準
No. 選出基準 配点
1 学術的な能力 10
2 教授経験 15
3 研修 5
4 パフォーマンス査定結果 25
5 学校開発活動計画 30
6 リーダーシップ力 15
Total 100
(出典:Education Act & Regulations, Nepali Version/2005)
校長のポジションに推薦された教員が校長に任命されるには、上記基準において 70%以上を獲得する必要がある。70%を超えない場合、郡内の他の学校から教員を選出し校長として派遣することになる。

(6)教員研修
主な研修の担当機関は、国家教育開発センター(NCED:National Center for Education Development)であり、教員研修は大きく2種類に分けられる。
① 教員の知識やスキル更新のために定期的に開催されるもの(TPD)
② 教員の資格を向上させるためのもの

(その他の研修)
・ 多言語による教授法研修をニーズベースで実施(実施機関:NCED)
・ SLC 資格を有し10カ月の現職教員研修を修了した教員を対象に、12学年卒業資格取得のための1年間の特別コースを実施し、同コースを修了した教員は大学の学位プログラムに進むことができる。(実施機関:後期中等教育局(Higher Secondary Education Board:HSEB))
・ 教員研修以外にもRPを含むインストラクター、校長、SMC等を対象とした研修

8)教育課程
(1)カリキュラム
ネパールの教育カリキュラムは1~5学年、6~8学年、9~10学年に分類されている。その内容について下記の通りである。

表 1 16 現行カリキュラムの概要
構成内容 国家の教育目的、教授言語、教授時間数、教授方法、生徒の学習評価等
改訂要領 通常10年に一度の改訂。
改訂作業は1学年から順次年度ごとに実施され、1学年の改訂後次年度には2学年、さらにその次年度に3学年と10学年まで改訂され、このサイクルで繰り返される。
各学年単位での改訂は、1年目にカリキュラムの作成、2年目に試行実施、3年目に新カリキュラムが施行される。
学校の年度 4月~翌3月
登校日数 年間220日(内、授業は192日)
授業時間数 1~3学年:年816時間
4~5学年:936時間
6~8学年:1,050時間
授業時間 1時限=45分間
学期制 ネパールでは学期制は採用せず、学校は60日程度の休暇の時期を決定する権利があり、多くの学校は夏期に休暇となる(山岳部では冬に休暇をとる学校も多い)。

  (出典:Primary Education Curriculum 2063)

Primary Education Curriculum 2063によると、初等教育の目的は子どもの特質を発達させることにあり、主な発達エリアは次のとおりである。

① 国家、国民の統合性、そして民主的な文化の感情を促進することにより、道徳性、規律、自立のような社会的、個人的な資質を培う。
② 基本的な言語及び数学的なスキルを身につける。
③ 科学、情報、コミュニケーションテクノロジー、そして環境や健康に焦点を置いた基礎的及び応用したスキルを培う。
④ 芸術や美に関する興味を促すことにより創造的なスキルを発展させる。
⑤ さまざまな民族、カースト、宗教、言語、文化や地域についての理解を促進し、包括的な社会づくりを促す。
⑥ 行動規範や人権、社会の美徳や規律に対する適応性を培う。

表 1 17 1~3学年のカリキュラムフレームワーク
S.N. 教科 時間数/週 満点
1 ネパール語 8 100
2 英語 5 100
3 算数 6 100
4 社会及び創造的美術 6 100
5 母国語、科学、健康と体育 5 100
6 ローカルサブジェクト 4 100
合計 34 600

表 1 18 4~5学年のカリキュラムフレームワーク
S.N. 教科 時間数/週 満点
1 ネパール語 8 100
2 英語 5 100
3 算数 6 100
4 社会 5 75
5 創造的美術 3 25
6 科学と環境 4 50
7 健康と体育 4 50
8 ローカルサブジェクト/母国語 4 100
合計 39 600

表 1 19 6~8学年のカリキュラムフレームワーク
S.N. 教科 時間数/週 満点
1 ネパール語 5 100
2 英語 6 100
3 算数 6 100
4 社会 5 100
5 科学 5 100
6 健康と体育 3 50
7 サンスクリット 3 50
8 人口と環境 3 50
9 美術と職業前教育 3 50
合計 39 700
表 2 24 9~10学年のカリキュラムフレームワーク
S.N. 教科 時間数/週 満点
1 ネパール語 5 100
2 英語 6 100
3 算数 6 100
4 社会 5 100
5 科学 5 100
6 健康、人口と環境 4 50
7 第一選択科目* 5 50
8 第二選択科目** 5 50
合計 36 700

*第一選択科目:言語分野(英語、フランス語、ドイツ語、ネパール語、日本語、他)人間と社会科学分野(地理、文明、歴史、経済、人口、社会学、環境)あるいは数学
**第二選択科目:コンピュータ科学、家庭科学、食品技術、産業、教育、商業、会計、音楽、芸術、ヨガ教育、ジャーナリズム、ハンドクラフト、農業、家政、音響、タイプ、写真、絵画、ダンス、器楽、健康と保険教育)

(2)教育へのアクセス
2015年のネパールの基礎教育統計によれば、初等教育のアクセスは平均的には非常に高い数字を達成している。粗就学率は平均で117.1%(女子は112.9%)で純就学率も87.6%(女子は87.6%)である。中等教育に関しては、粗就学率は平均で51.6%(女子は51.9%)であるが、純就学率はかなり低くなり男女平均で34.6%(女子は34.7%)にとどまっている。

表 1 20 基礎教育統計
       就学前教育 基礎教育
(1-8学年) 中等教育
(9-12学年)

レベル別学校数 35,121 34,506 9,120
就学人数 (総数) 1,014,339 4,518,868 1,327,580
男子 525,711 6,170,668 1,317,580
女子 488,628 3,038,406 647,189
粗就学率 (男女平均) 77.7 117.1 51.6
男子 78.1 112.9 51.4
女子 77.3 121.4 51.9
純就学率 (男女平均) 96.2 87.6 34.7
男子 96.6 87.7 34.6
女子 95.7 87.6 34.7

(出典:Nepal Education in Figures 2015 At-A-GLANCE)

教育へのアクセスは、初等教育および中等教育ともに著しく伸び得ており、それは、政府が一貫して教育を国家の重要施策として位置づけてきたこと(国家予算内の教育予算の比重が大きく、更に増加している傾向からも読み取 れる)、そして教育の無償化及び女子やダリット等を対象にした奨学金の支給などの具体的な政策、更に学校の年度初めに開催される全国的な Welcome to School プログラムに寄与するものである。Welcome to Schoolプログラムは2004年にUNICEFによって1,600の公立校で始められ、2005 年に政府によって採用された。政府はすべての公立校に学業年度開始の 1週間は戸別訪問を行う旨の通達をし、学業年度開始後 1 週間を「全国的就学週間」と位置づけた。
こうして、SSRPの策定後、多くの教育アクセス改善の努力がなされ、GONは、すでに、8年生までの自動進級を決定し、75郡において部分的に実施を開始している。従って今後は、教育の質の改善がより大きな課題となっている。

(3)教育の質
ネパールでは、初等教育(1-5学年)の純就学率は改善傾向にあるが(69.3%(1999年)→83.5%(2003年)→96.2%(2015年):教育省)、留年率や中退率が依然として高い。
特に第1学年の残存率は78.4%、留年率は15.2%、退学率は6.5%と高く、第5学年においても残存率は86.7%(2015年)に留まる。
こうした背景には、学校の施設、環境、学習資源の可能性、学校への投資、体罰、教師の態度など、生徒の学習に対する興味や無関心に影響を与える様々な要因が考えられる。以下、教育の質に影響を与える要因をあげる。

表 1 21 教育の質に影響を与える要因
要因 内容
親が不就学 各家庭において子どもが学業に集中できる環境が整っておらず、学校や勉強の習慣に慣れるのが容易ではない。
家庭の経済的問題 各家庭で子どもたちが学校に行くのに必要な道具(例:制服、靴など)を購入するのが困難である
児童労働 文化としての児童労働が常態化している
不適切な入学 1学年の進級率が他の学年よりも低く留年率が高い背景には、実際の年齢よりも年少児が入学している
教師の教育方法の未熟さ よく準備されていない授業、進度の早い授業、わかりやすく説明し、理解させることよりも覚えることに焦点を当てる教育がなされる。つまり、クラスで何が教えられているのか子どもが理解できず、クラスについていけない。
教材関係の不足 教材やテキストが不足している。教科書が十分に整っていない。たとえば、児童が字を読むことに慣れるための教材は、多くの学校では教科書のみとなる。カリキュラム開発センター(CDC)では学校からの副教材の要請により副読本 のサンプルを定期的に作成してはいるものの、予算の都合で限られた冊数の印刷のみしかできず、それらの副読本はDEO等に参考資料として配布されるのみとなっている。
体罰の問題 宿題をしなかったり、授業に定期的に出席しなかったり、授業でうるさくしたり、教師が質問したことに適切に応えることができなかったり、授業に定期的に出席できなかったりすることで体罰が課せられることがある。
不十分な学校施設 クラスの部屋が暑すぎる、学校に保健室や、痛み止めがない、教科書や、テキスト、机、椅子、黒板がないことも、中途退学の原因となる。
学校の直接、間接費用 ネパールでは公教育は無料であるが、様々な諸費用がかかる。直接費用としては、授業料、練習帳のための費用(教科書は8年までは無料)制服、文房具がある。間接費用としては、試験料と学校維持費がある。こうした費用が貧しい家庭の負担になり中等退学の引き金となる。また、教師の退職、新任、葬儀、建物の修繕、自然災害などにかかる予期しない費用がある。

NLSSでは 6 歳から 24 歳の今まで就学したことのない男女(8.7%)を対象に、なぜ就学しなかったのかを調査した。
これによると、
 30.0%が「両親が望まなかったため」と回答
 次いで22.5%が「家庭で働かなければならなかったため」
 17.2%が「就学する意思がなかったため」
 7.2%が「若すぎるため」
 3.4%が「障害があったため」
 3.1%が「学校が遠かったため」
という回答が得られた。
性別で見てみると、男子に多かった主な理由は、
「就学する意思がなかったため」、「両親が望まなかったため」、「若すぎたため」、「家庭を助けるため」であった。
一方で女子に多かった理由は、
「両親が望まなかったため」、「家庭を助けるため」、「就学の意思がなかったため」であった。
また、退学の理由について調査したところ、25%が「学術的な前進が見られないため」、22%が「家庭への助けが必要であるため」と回答した。また、17%が「結婚」、7%が「両親が望まないため」、7%が「学費が高すぎるため」と回答した。

図 1 22 これまで就学したことがない6-24歳の人々の不就学理由

(出典:CBS(2011)‘Nepal Living Standards Survey 2010/11 Statistical Report Volume One p.90)
図 1 23 6-24 歳の退学理由

(出典)CBS(2011)‘Nepal Living Standards Survey 2010/11 Statistical Report Volume One’ p.100

(4)教育格差
本来平等に享受するはずである教育に生じてしまう教育格差は、家庭環境、貧困、ジェンダー、地域、民族、言語、障がい、紛争等以下の様々な要因により生じるとされている。

(1) 地域による教育格差
都市部は交通の便がよく、大規模で施設も整備された公立学校、私立学校が存在し選択肢は多く、学校同士の競争もあるため教育の質も高まる。教員も都市部の学校に勤務することを好む。農村部では、学校まで山道を1時間、2時間かけて通い、学校に行っても先生が来ていないことがある。また教科書の配布や学校の予算配賦なども遅れがちである。こうした地域的条件が教育格差を生み出している。2010/2011年のネパールの識字率は 60.9%であったが、識字率は大幅に都市部(77%)の方が農村部(57%)よりも高い。地域格差も大きく、最も識字率が高かったのはカトマンズ都市部で84.9%、次いでその他丘陵部の都市部が80.0%であった。一方で、最も低いのは中部タライ農村部で40.8%、次いで西部タライ農村部が 53.3%であった。2011年人口センサス調査のデータでは、5歳から16歳の学齢人口のうち約656万人(全体の85%)は就学しているが、約119万人(15%)(男子56万人、女子63万人)は、不就学の状態にある。不就学にある者のうち、9割以上の約109万人は農村部、残りの10万人は都市部に居住している。これらの不就学児童の中には、一度も学校に行ったことが無い子どももいれば、一旦は学校に入学したものの途中で通うことをやめてしまった子どももいる。
(2) 地理的条件(山岳地域、丘陵地域、タライ平野)による教育格差
都市部・農村部の格差に加えて、北部・中部・南部の地形の違いも格差を生み出すもとになる。北部に広がる山岳地域の農村部には、小規模な学校が各集落に存在するものの、校舎は老朽化し、初等教育低学年しかカバーしていないケースが多い。丘陵地域の都市部は公立学校、私立学校ともに比較的整備された環境にあるが、農村部は山岳地域の状況とあまり変わらない。タライ平野は、インドとの国境にあって産業化が進んでいるため山岳地域や丘陵地域から人口が流入し、各学校の教室は過密状態にある。
実際、総就学率は、各年齢の子どもの人数に対する各レベルの教育を就学した人数の割合を表している。ネパールにおけるGERは初等教育が122%、低中等教育が87%、高中等教育が74%であった。地域別のGERを見ると、初等教育はタライ都市部と中部タライ農村部で100%を下回っている。他は全ての地域で100%を超えている。教育レベルが上がるにつれて地域間格差も大きくなり、第三次教育については、カトマンズ都市部が65.8%で最も高く、続くタライ都市部(25.0%)や中部丘陵部の農村部(20.8%)を大きく上回っている。他方、半数の地域で第三次教育レベルのGERは一桁台で、最も低いのは西部丘陵部の農村部の4.4%である。

(3)ジェンダーによる教育格差
初等教育の機会格差は男女の間ではほぼ解消されたと思われるが、長男や男子は都市部の学校へ送るが、女子は居住区そばの学校へ送る、あるいは女子は公立学校へ送るが、男子は私立学校へ送るなど、受けることのできる教育の質には依然としてジェンダー格差が存在する。
事実、公立校よりも教育の質が良いといわれる私立校の就学者数は、男子が56%とやや多くなっている。Gender Audit of Nepal’s School Sector Reform Program(2012)では、より多くの男子が私立校に通う現状と、ネパールにおける男子優遇の根強い文化的規範の関連が指摘されている。
その他のジェンダーによる教育格差は、初等教育及び前期中等教育の全国平均では認められないものの、Dolpa、Jumla、Bajhang、Humla、Mugu等の山岳地帯の郡においては前期中等教育レベルの女子の粗就学率は男子の粗就学率よりも30%以上低くなっている。これらの郡では初等教育レベルでは女子の粗就学率の方が高いが、前期中等教育レベルで急激に女子の粗就学率が落ち込み、その差が30%にもなる結果となっている。この状況の背景には、これらの地域の年少児の結婚慣習や、インドに出稼ぎに行く男性が多いために女性が家族を支える必要があるものとみられる。

(4)所得による教育格差
初等教育が無償であるとはいっても、制服や履物、文具代などにはお金がかかる。家族が貧しい場合、家業や幼い弟や妹の世話をすることも必要となる。比較的裕福な世帯は子どもを私立学校に送ることが多いが、貧困層の世帯は公立学校へ送ることすら難しい。

(5)言語による教育格差
ネパールでは約80の言語が使われているが、一般的にネパールの公立学校ではネパール語が教授言語である。多くの子どもたちは、家庭で話している言葉とは違う言葉で授業を受けている。現地語を教授言語とすることも取り入れられているが、多くの教材はネパール語か英語で、進級試験や修了試験もネパール語や英語で受けなければならない。

(6)カーストによる教育格差
ネパールの憲法ではカーストは禁止されているが、社会にその影響は根強く残っている。ダリットと呼ばれるグループをはじめとする低カーストのグループは、社会経済活動において不利益な立場に置かれることも多く、結果として貧困家庭が多い。低カースト出身の教員から教わることを嫌がる傾向もまだ残っている。

(7)障害による教育格差
障がいを持つ子どもたちが通えるような学校の施設、教材等は十分に整備されておらず、また特別支援教育の訓練を受けた教員はごく限られている。全体の障害児童人口における就学障害児童人数の割合は10%以下にとどまることが指摘されている。

(8)公立学校の仕組みによる教育格差
ネパールの公立学校は教育段階によって学校が分れているわけではなく、1年生から12年生まで一つの学校でカバーする。しかし、農村部には低学年しかカバーしていない小規模な学校が多い。10年生、12年生までカバーしている大規模校は校舎や教員が整備されていることが多い。

(9)教授内容(公立と私立間)による教育格差
ネパールでは初等教育レベルでも約15%の子どもが私立学校に通っており、その割合は年々増加傾向にある。これは公立学校の教育の質に問題があること、教授言語を英語とする私立学校の方が将来の就職に有利であると思われていることなどが主な原因である。実査、2013/14年度のSLCの合格率は、公立学校はわずか28.19%であったのに対し、私立学校は93.26%であった。

図 1 24 ネパールにおける識字率
     
(出典:CBS(2011)‘Nepal Living Standards Survey 2010/11 Statistical Report Volume One’ p.85 )
図 1 25 総就学率(GER:Gross enrollment rates)

(出典:CBS(2011)‘Nepal Living Standards Survey 2010/11 Statistical Report Volume One’ p.96)

10)ドナーの動向
(1)全般的傾向
ネパールの開発に関わる主要ドナーの多くが、貧困削減を最重要課題に掲げているが、目標の達成過程におけるアプローチ、支援形態、具体的な優先セクターおよびサブセクターは違っている。
上位ドナー国/機関は主要な分野を網羅しているが、中でも英国、北欧諸国、UNDP は、教育・保健分野などの社会開発セクター支援を、ADB および世界銀行は、道路・電力施設などのインフラ整備などを通じた経済開発支援を、それぞれ重視する傾向にある。また、貧困削減を阻害する大きな原因の1 つが政治の不安定にあると見て、大多数のドナーが制度・政策支援(国づくり支援)に取り組んでいる。

(2) 日本の援助政策
日本も同様に主要な分野を網羅しており、社会開発、インフラ整備の両面を重点的に援助してきたことから、世界銀行、ADB と並び長年のトップドナーとして広い分野を支援してきた。全体として、ニーズには膨大なものがあるが、日本を含むそれぞれのドナーが,重複することなくそれぞれ一定の役割を担ってきている。たとえば農業や電力分野では支援内容の役割分担が、道路や一部の農業関連分野では地域的な分担がなされている。また社会セクターや地方行政分野では、プール・ファンド参加ドナーに対して、プロジェクト型の支援を通じセクター・プログラムに貢献する図式ができている。
また、2015年4月25日12時頃(現地時間)、ネパール中西部で発生したマグニチュード7.8の大地震は、ネパール及びその周辺国に甚大な被害をもたらし、日本は、ネパール政府からの要請を踏まえ,緊急援助物資の供与及び1,400万ドル(約16.8億円)の緊急無償資金協力の実施に加え、国際緊急援助隊(救助チーム、医療チーム、自衛隊部隊)を派遣し、被災者に対する緊急人道支援を実施している。さらに、地震からの「より良い復興(Build Back Better)」のため、学校・住宅・公共施設の再建等の分野で、当面、総額260億円超規模の支援を行うこととなった。

(3)日本の教育支援
日本は、ネパール政府の教育セクター・プログラム(SSRP2009-2015)に沿って援助を展開している。
SSRPは万人のための教育、および2015年までのMDGsの目標2(普遍的初等教育の達成)に向け、EFA国家行動計画2001-15新三カ年開発計画などをふまえ、更に、2007/08、2008/09年の実績値を基礎として、2015/16年までの教育目標を示している。SSRPではプログラム終了時点で初等教育純就学率100%を目標に、アクセスの改善、新規19,500教室建設、および13,000教室の改修、教育行政の地方分権化、住民参加の学校運営の推進などを完了させることとしている。
教育省の優先政策は基礎教育(1~8学年)である。教育への公共投資はこれまでも基礎教育を重視してきた。公財政支出の17%は教育に、そのうち86%は学校教育に、そのうち70%は基礎教育に向けられている。日本のこれまでの支援も基礎教育部門が主である。
日本政府はこれまで学校建設やJOCVによる支援を中心に援助を行ってきた。2006年から2011年までの日本の教育分野援助実績は、2003年から継続されたプロジェクトを含めて27.74億円で、各種の無償資金協力は19.3億円(70%)、技術協力は8.44億円(30%)であった。OECD統計によれば、2006年から2011年までに教育分野においてすべてのドナーが執行した実質支出額に占める日本の貢献は8.29%である。2009年にはこの6年間で最大の16.52百万ドルの執行があったが、全体の金額が171.83百万ドルと大きかったため、9.61%にとどまっているが、2006年には13.68百万ドルの執行であったのに全体が61.45百万ドルであったため、日本の貢献は22.27%と計算される。
これまでの日本政府の援助は上記のように教育の量的拡大、質的向上に大きく寄与している。
しかし、地域、ジェンダー、カーストによる教育機会の格差は改善の方向にあるが、この事が大きな教育政策の課題となっている。
また、日本のNGOよび民間セクターとの連携は、教育、保健など社会セクターを中心に行われており、草の根無償(現地NGOなど対象)、日本NGO連携無償資金協力(日本のNGO対象)などのスキームを通じ、両国のNGOが大きな役割を果たしている。さらに、日本のODA全体でも初めての試みとして、教室建設を行う無償資金協力「基礎教育改革プログラム支援のための学校改善計画」(2011年)では、コンサルタントのほかに、日本のNGOであるセーブ・ザ・チルドレンジャパンの職員が、ソフトコンポーネントである学校運営改善を担当している。無償案件の一部コンポーネントの実施にNGOが直接関与する試行的な取組として注目に値する。
本事業においては、基礎教育の充実を含めた要援護児童の支援を目的とし、その生活環境と学習環境の改善を兼ね備えた、人道支援を中心とするもので、これまでの日本の支援また他の国の支援とも重ならない特徴を持つものである。 


11)児童養護施設の現状
(1)児童養護施設の分類
ネパールには、要援護児童の保護を目的とした子どもケアホーム(CCH: Child Care Home)が、中央児童福祉委員会(CCWB:Central Child Welfare Board)の認可によって運営されている。
CCHは、要援護児童、特に親に養護されることなく傷つけられやすい子供たちのケア、サポート、教育、健康管理、そして安心を提供するために作られているものであり、2015年の段階で、585の子どもケアホームが登録され運営され、概ね以下の三つのタイプに分類されている。

(1) 政府が運営する福祉ホーム(4箇所)
(2) 少年院(3箇所)
(3) 非政府組織 (NGO) あるいは民間で運営されるもの

また、これらのCCHは以下の通りに目的分類される。
① 武力紛争・被災の子どもの保護
② ストリートチルドレンの保護
③ 親が刑務所にいる児童の保護
④ 障害を持つ児童の保護
⑤ HIV/エイズとともに生きる子どもの保護
⑥ 虐待と性的搾取にある子どもたちの保護
⑦ 孤児や助けのない子どもの保護
⑧ 人身売買や児童労働の中にある子どもの保護
⑨ 特定の宗教の子供の保護
⑩ 救出された子どもたちのため 

以上のようにCCHは分類されているが、実際の運営においては複数の目的でサービスを提供している施設が多い。またその多くは、国際的な民間NGOの働きによって運営されており、資金調達源やそれぞれの経営状態、運用規定なども千差万別である。

(2)児童養護施設の分布と必要性
現在ネパールには585のCCHに合計15,811人の児童 (男児:7,973、女児:7,838)が収容されている(表 3-1を参照)。全国75郡の内45郡のCCHが運営されている。また、45群の中には1か所のみのCCHがあるのは17郡で、首都のカトマンズでは205のCCHが運営されている。
2014年12月末の段階で、28のCCHが11人、40のCCHが10人、84のCCHが10人以下であると集計されている。つまり、実際に運営されているケアホームの内26%は、11人もしくは、11人以下の子どもを受け入れている状態である。

図3-1 ネパール孤児院の子供たち
    

    

図3-2 孤児院の食事の風景

表 2 1 郡別CCH数-児童数
SN District No.of CCHs Boys Girls Total
1 Kathmandu 205 2903 3376 6279
2 Lalitpur 134 1489 1497 2986
3 Kaski 63 678 764 1442
4 Chitwan 31 567 477 1044
5 Bhaktapur 21 420 283 703
6 Makwanpur 13 129 125 254
7 Banke 10 127 88 215
8 Kavre 9 155 172 327
9 Kailali 7 65 57 122
10 Rupandehi 7 164 118 282
11 Jhapa 6 64 42 106
12 Sunsari 6 126 99 225
13 Sarlahi 6 61 46 107
14 Dhading 6 69 54 123
15 Surkhet 6 144 137 281
16 Humla 4 37 88 125
17 Parsa 4 132 0 132
18 Morang 4 70 57 127
19 Nawalparasi 4 115 90 205
20 Sindhupalchwok 3 36 26 62
21 Kanchanpur 3 69 2 71
22 Sindhuli 3 12 15 27
23 Sankhuwasabha 3 15 26 41
24 Dolakha 2 16 4 20
25 Tanahu 2 12 12 24
26 Bardia 2 53 32 85
27 Dhankuta 2 7 11 18
28 Nuwakot 2 50 11 61
29 Dang 1 22 18 40
30 Dhanusha 1 2 4 6
31 Siraha 1 4 9 13
32 Jumla 1 12 12 24
33 Rautahat 1 20 5 25
34 Bara 1 9 10 19
35 Udayapur 1 6 4 10
36 Rasuwa 1 13 10 23
37 Mahotari 1 18 12 30
38 Ilam 1 4 2 6
39 Myagdi 1 5 5 10
40 Kapilbastu 1 16 4 20
41 Dailekh 1 1 3 4
42 Achham 1 12 6 18
43 Saptari 1 22 0 22
44 Palpa 1 15 11 26
45 Lamjung 1 7 14 21
Total 585 7973 7838 15811
(出典: DCWB and CCWB Record as of December, 2014)
CCHの設置数の推移としては、2008年に合計454のCCHが運営されていたが、5年後の2013年には797(1.75倍)に増加している。しかし、翌年の2014年には46郡で594と大幅に減少し、さらに、2015年1月では585に減少している。(Table3 3を参照)。

表 2 2 CCH数と設置された郡数の年合計推移
Year No.CCHs No. Districts
2011 602 38
2012 767 33
2013 797 46
2014 594 46
2015 585 45
(出典:The State of Children in Nepal Report, 2011/2012/2013/2014 and DCWB/2015)

なお、このCCHの配置特徴としては、
① カトマンズ郡(首都)
CCHの最も数が多いのはカトマンズ地域であり、2008年に166であったのが、2014年では223になっている。その理由は、健康、教育、コミュニケーション、インフラなどにアクセスしやすいためである。最新のDCWBの報告によれば、CCHは205、入所児童は6,279(男子2,903、女子3,376)であったが、しかし、この地域でのCCHの数は減少しつつある。

② ラリタプル郡
CCHが集中する第二の地域で、2008年に、94のケアホームがあり、その数は、2014年で120に増加している。入所児童は、2,847人で(男子1,523人、女子1,324人)ある。2015年には、その数はさらに134となり、児童は、2,986人(男子1,489人、女子1,497人)となった。施設の多くは、Godawari, Bagdol, Nakhipot, Dholahiti, Dhapakhel and Bhaisepati area に位置している。

③ カスキ郡(ポカラ)
2008年に、47のCCHがあったが、2015年には63となり、児童数は、 1,442人 (男子678人、女子764人)となった。1,442人の児童の内、22人は、障がい児童(男子7人、女子15人)、HIF感染児童が26人(男子14人、女子12人)46人は、紛争の影響を受けた児童(男子27 人、女子19人)である。

④ チトワン郡
2008年には、CCHの数は20であったのが、2014年では、32となっている。児童は、1,047人(男子477人、女子570人)。増加率が高く、わずか6年の間に、12の新しいCCHが登録されている。

⑤ バクタプル郡
2008年に、CCHの数は13 であったが、2011年から登録される数は、継続的に増えて、2014年には、706人の児童(男子420人、女子286人)をかかえる、21のCCH数となっている。
図3-3 孤児院の分布

35:カトマンズ
38:ラリトプル
34:カスキ(ポカラ)
12:チトワン
10:バクタプル
このような状況から、CCHはカトマンズ、ポカラといった大都市に集中していることがわかる。また、その数は現在約600近いCCHがあるものの、それらは国際的な団体のサポート、あるいは個人、宗教グループ、そして個々の慈善団体によって運営されており、その規模も小さく経済的にも脆弱で、その数が随時変動していることから、非常に不安定な運営状況である。さらに、要援護児童の分布状況を見ると、CCHの数は決して十分ではなく、公的な施設設置は急務の課題である。

(3)要援護児童の分布
要援護児童の分布については、すべてを網羅する詳しい統計調査はまだ行われていないため、Guragain,A.等の共同研究(Regional Disparities in the Magnitude of Orphanhood in Nepal)を参考に、サンプル調査による推定を行う。
この共同研究によれば、孤児および孤児相当の児童の地理的分布は、地域的な差異があると指摘されており、Guragain等は、DHS(Nepal Demographic and Health Survey 2011)に基づき、8,682世帯の21,484人の児童を対象として調査を行った。その結果、21,484人の対象児童の内1,142人(5.3%)が孤児であり、その要因としては30%が母親と死別、64%は父親と死別、そして6%は両親ともに死別した子供である。男女差はほとんどないが、年齢差が見られている。(Table 3-4を参照)

表 2 4  年齢・性別による孤児の分布
Factors Total Frequency (%) Non-orphan Frequency (%) Orphan
Frequency (%) P values
Age groups < 0.001 Under 5 years 5444(25.3) 5367 (98.6) 77 (1.4) 5-9 years 6118(28.5) 5888 (96.2) 230 (3.8) 10-14 years 6606(30.8) 6098 (92.3) 508 (7.7) 15+ years 3316(15.4) 2989 (90.1) 327 (9.9) Sex 0.069 Male 10844(50.5) 10298 (95.0) 546 (5.0) Female 10640(49.5) 10044 (94.4) 596 (5.6) (出典:Regional Disparities in the Magnitude of Orphanhood in Nepal, Pertanika J. Soc. Sci. & Hum. 23 (3): 711 - 724 (2015)) 表 3-5示すように、経済区域や都市か地方での分布の差異が明らかである。たとえば18%の子どもが山岳地域から、そして約半数に当たる42%の子どもがタライ地方から来ている。また、2/3にあたる76%の子どもが都市に集中している。 表 2 5 経済的・地域別の孤児の分布 (出典:Regional Disparities in the Magnitude of Orphanhood in Nepal, Pertanika J. Soc. Sci. & Hum. 23 (3): 711 - 724 (2015)) 図 2 4 年齢と郡レベルでの孤児の分布図(2011年) (出典:Regional Disparities in the Magnitude of Orphanhood in Nepal, Pertanika J. Soc. Sci. & Hum. 23 (3): 711 - 724 (2015)) (上図はその分布差を図式化したもので、ピンク色の部分は、孤児の率が高く、黄色は平均値に近く、青は、平均値を下回ることを示している。) なお、このサンプル調査を基本に考察すると、子ども人口の約5%は孤児であると思われ、また、14歳以下の児童人口が9,633,221人(2013年)とするならば、その数は約50万人と推定される。さらにその内、両親を失った子供のみを考えるならば、その数は6%で約3万人となる。 もちろん、統計値には暗数があることも周知されていることであり、さらに2015年の大規模地震発生による影響も合わせて考えれば、孤児の統計的数値は、その数倍の数を計上することも考えられる。また、孤児の発生原因は貧困、飢餓からくる親との死別が主要なものとして考えられ、今後において劇的に孤児の人数が減少することは考えにくい。 (4)要援護児童に対する取り組み 児童労働におけるネパール政府の取り組みについては、先に述べた通りだが、予算不足や要員不足なためその実効性は郡とその下部の市と村の委員会ななどに依存せざるを得ない状況である。 結果として郡や市・村の委員会の実効性を担う「NGO」の存在が極めて重要になる。実際に、積極的な市や村では、NGOと連携して児童労働を無くすためのアクションプランを採択しているところもある。つまり、ネパールの児童労働問題への取り組みは、草の根レベルではNGOに依存し、またCCHの運営においても約95%のCCHがNGOによって運営されているのが現状である。 また、NGOの活動は玉石混交であり、優れた活動もあるが問題が指摘されるものも存在する。CCWBでは、こうしたCCHが一定の公共サービスを提供できるように、「子どもに対する国家方針/2012年」と「子どもケアホーム(CCH)の運営管理基準/2012年」(女性児童社会福祉省:MoWCSW)を作成し、CCHの働きをモニタリングしてきた。その結果、CCHが孤児や脆弱な子供たちを守る最後の砦であるにも関わらず、その機能を果たせないでいる現状も認識された。 ネパールにおいて活動している児童保護に関わっているNGOは、大小合わせて50団体を超えている。その代表的な活動内容をみてみると、NGO:CWIN(Child Workers in Nepal Concerned Center)では、児童労働、ストリートチルドレン、児童虐待、児童の人身売買などの問題に対し取り組んでいる。とくに政府に対して働く子どもの問題に対する政策の導入を働きかけ、成果を上げると共に、児童労働の中の子どもたちの救済のための取り組みも実施している。またCWINは、政府からの委託で、チャイルドヘルプ・ラインを運営している。働く子どもたちの相談に応じる他、緊急性の高いと判断した場合には子どもの救出、保護も行う。さらに、NGO:プランネパールでは、CWINと連携し、政策提言や全国イベントなど活動しており「過酷な状況で働く子どもたちに『希望』(HOPE)をもたらすHOPE Projectを実施している。このプロジェクトの中心は児童保護であるが、郡児童福祉委員会(DCWB)、市児童保護委員会(MCPC)、郡開発委員会(District Development Committee)と連携し、保険(妊産婦、子どもの病気、栄養、家族計画等)、教育(初等、中等教育、職業訓練等)、生計向上(マイクロファイナンス、若者の雇用促進等)、子どもの保護(人身売買、早すぎる結婚への対策、ストリートチルドレン、女性に対する暴力、子どもの権利、働く子ども・児童労働、子どもクラブ、子どもメディア等)、子どもの防災(リスク対策、気候変動等)など総合的、体系的、戦略的な取り組みをしている。 具体的に、プランは子どもの救出、監視のための委員会(Rescure & Monitoring Committee)を設立すると共に、地区の労働委員会、警察、学校、商工会議所、等々と協働しつつ実際の救出活動を進めている。また救出した子どもについては、包括支援センターの働きにつなげ、そこでは、訪問してきた子どもたちを10時~5時の運営時間において受け入れ、遊び・スポーツ・勉強・入浴・洗濯・休憩、等ができるようになっている。つまり、センターは、精神的リハビリの場であり、礼儀などを含め「ライフスキル教育」(Life Skill Education Class)や人権教育、学校教育へ参画できるよう補習教育も行う教育の場である。したがって最終的には、児童を正式に学校に入学できるように、児童の進路形成を支援している。他にも、NGO:ワールドビジョン、NGO:セーブ・ザ・チルドレンなども同様の活動をしており、多様な展開を見せているが、共通して以下のような活動が概括される。 表 2 6 既存NGOの児童保護に対する取り組み 項目 内容 アプローチ ・ 自治体の行政および経済界への取り組み ・ 自治体職員・議員等への広報・政策提言 ・ 商工会議所/雇用主への広報・オリエンテーション ・ HFラジオ放送、書名運動、パンフレット作製・配布などによるコミュニティへの広報活動 子どもの救出活動 児童労働の現場訪問などを注意深く行い、必要に応じて救出、保護する 子どもリソースセンター活動 働く子どもや児童労働の子どもたちの救出後の包括支援センターを運営 「子どもクラブ」(Child Club)の役割 2 つのタイプがある。1つは学校が運営するクラブで、学校の中に設置され、教員等が運営しているもの。もう1 つはコミュニティレベルのクラブで、これはNGOが直接運営しているものである。子どもクラブは原則子どもたちの自主運営である。しかし成人によるファシリテーターの役割も重要で、リーダー養成研修を行っている。これらの活動は、子どもたち自身によるリハビリの場、人権教育の場であり、大人世界への発言の場として大きな成果をあげている。 教育支援活動 働かされることによって失った教育機会を取り戻すため学校での授業についていけるよう補習学習を設けている。ここで小学校への入学レベルの学力を養い、入学していく。また、入学にはやはりお金が必要なので、奨学金・学用品支給(教材、カバン・文房具・辞書等や制服など)を行っている。 職業自立支援 15 歳以上になると職業訓練プログラムを提供するため、職業訓練・起業支援( Vocational Skill and Start-up Support)を行っている。また職業安全・健康支援の一環として、ネパールの労働法、危険な仕事などについての情報提供も行っている。 貯蓄制度 子どもたちが働いたお金を貯蓄する制度を設けている。貯蓄のための帳簿付けなどの研修や適切な運営への指導も行う。 また、こうしたNGOの働きをさらに労働委員会と協働して組織的に目的志向性を強くして行っているのが、国際労働財団(JILAF)によるネパールの学校外教育(ノン・フォーマル・スクール)プロジェクトである。このプロジェクトは農村部に住む6-13歳の公立学校に就学していない子どもを対象とし、一校50名の生徒を二クラスに分けて、午前と午後それぞれ3時間ずつ授業を実施するものである。教科書はユニセフの作成した、読み書きの初級の二冊を用いて、9か月間にわたって基本的な読み書きの授業を行って基礎能力をつけさせ、近くの公立学校に随時編入させる。 この働きのため、JILAFからは、制服、カバン、教科書、ノート、筆記用具、(黒板、チョークなどの)備品、教室の賃貸料、教員給与が支給される。 ただし、この取り組みについては ① 教室が個人の家や建物の一つを借りたものがほとんどであった ② 採用された教師も、生徒たちが学習意欲を持ち続けるような工夫をすることはあっても、大半が以前の労働組合役員という教師としての経験のない者がほとんどであった ③ 学校に通うという基本的習慣を作るために子や親の意識を変える必要性が大きかった ④ 学校により教育課程の進捗状況に大きな差があった ⑤ 入学させる子どもの選択に公平感があった。 などの課題が提出され、軌道修正とプロジェクト改善を実施している。 以上より、NGOの取り組みには試行錯誤的な部分もあるが、すでに多くの実践の中で、効果的な経験則も蓄積されてきている。大切なのは、それらのよい経験則が分かち合われ、より実効的な養育環境が提供されることである。そのための児童養護施設職員の教育は、後で述べる学校の教員の質を高める教育と同様に重要なものとなる。 そのため、要援護児童に対する取り組みにはおいては、こうした先例を踏まえて、実効性のある具体策を企てるうえで、NGOの活用が欠かせないものであることを認識し、それをよりよい形で活用することが望まれる。 12)教育の必要性 (1)基礎教育の重要性 保護された児童は、その養育的な環境によって、健康や規則正しい生活習慣、健康的な価値観などを身に着けていくことができるが、そのような生活環境を整えるだけでは、将来の子どもの自立を助けることにはならない。これまで受けられなかった基礎教育を同時に受けられる学習環境を必要としている。いわゆる保護だけでは子どもたちを本当に助けたことにはならない。 つまり、要援護児童に必要なのは、生活の状況を改善し、自分の身の安全を確保する基礎教育に他ならない。基礎教育は、学校教育における最初の段階で、児童期を対象とし、将来の社会生活を送る上で必要な知識・技術および態度を養うものである。また、ネパールの場合は、この基礎教育を8年としており、それは、知識と経験の幅を広げ、高等教育への進学、あるいは社会で働くための準備をする前期中等を含むストラクチャーとなっている。 従ってこの基礎教育を授けることにより、子どもたちは文字を読んだり、書いたりすることができるようになり、公共の情報や、バス、電気、ガス、水道などの公共サービス、さらに新聞、種々の機関紙や手紙、ラジオ・テレビ番組など、彼らの危険と不安を直接取り除いてくれるサービスを自ら利用することができるようになる。また公共の場での自己表現、民主的な討論、さらには法的権利の行使などへの参加を可能とし、より生き方の選択への自由度を確保することができる。自らの考えを的確に述べ、行動を起こすことができる自由度が高められることになる。 また、基礎教育を受けることでより、危険な仕事に就く危険性を回避させ、よりよい仕事に就くことを可能とさせる。もちろん、ネパ―ルの場合は、より賃金の高い安定した職業に就くためには、後期中等教育へと進むことが望まれるのであるが、充実した基礎教育は、子どもたちの未来の可能性を拡大することに間違いはない。 そして同時に、基礎教育は個人の便益に還元されるのみならず、家族、そして地域社会や国家の経済をも改善することにもつながっていく。たとえば基礎教育が普及することによって、貧困の緩和または撲滅につながることも考えられる。学校に通う子どもは将来、雇用者となり、特に教育を受けた女子は健康で栄養状態のよい母親となり、同じように健康で栄養状態のよい子どもの親となることができる。基礎教育によって家庭が、憩いの場となり、よりよい養育の場になっていく。もちろん、基礎教育のみで完全とは至らないが、こうした取り組み・考えが大きな一歩となる。 更に、基礎教育が国家的に普及することにより他者に対する理解や協力関係が深まり、紛争・戦争による破壊や不安定をなくし、テロリズム阻止の強い武器となる。そして教育によって国の環境悪化を食い止め、すべての学習者を持続可能な社会を生み出す主体者としていく。ワクチンや医療による措置が不十分な場合、エイズなどをはじめとする種々の感染性疾病を食い止める唯一の方法は教育である。さらに教育は人々の経済的な格差だけでなく、新しい情報・コミュニケーション技術の格差を少なくする。実際、基礎教育に求められている役割は、このような格差の再生産サイクルを自ら断ち切るため、最低限必要な知識や技能を身につけさせることであり、これらを理解し児童に対して基礎教育を教授することは非常に重要である。 (2)教員(指導者)の育成 子どもに対する基礎教育の提供と同時に、教師の教育の質を高める教育訓練が同時に考えられる必要がある。 ネパールでは、教員の給料が低く、他の業種や海外に流出してしまうことはあっても、教師数それ自体が慢性的に不足している、というわけではない。しかし、問題となっているのは、教育の質に関わる質の高い教員の不足である。実際、教員養成カリキュラムが適切ではない、教員養成機関での指導が不適切である、といった問題のために教員としての基礎的な知識や十分に備わっていないまま教員になる者が散見されることも事実である。また、教職に就いても、知識や技能の未熟さから生徒に適切な教育を実践することができず、児童の学習意欲の減退を招き、それが留年や中退を引き起こす原因ともなっている。 ことに、SSRPの枠組に沿って、進級を自動化する措置を開始して以降、こうした質の低い教育のために、たとえ教育を修了しても読み書き計算のできない子どもが多く存在することがあってはならず、教育の質的向上は、基礎教育普及と同様に重視されなくてはならない。 質の高い教育の普及は、個人的な所得、経済的成長、社会的成長、保健衛生の向上などの開発における主要目標に対して経済面での貢献が大きい。逆に、こうした貢献度が低い教育の問題は、教育の質が低いことに原因があるのであり、教育の質を左右するという意味で、教師の教育訓練は極めて重要である。 (3)貧困率と教育レベルの関係 表 2 2に示すとおり、貧困率は世帯主の教育レベルが高くなるほど減少する。世帯主に識字能力がない、または就学経験がない場合、その家庭の貧困率は11学年以上修了した世帯主の家庭の貧困率より4.5倍も高くなっている。同様に、11学年以上修了した女性のいる家庭の貧困率はわずか5.15%で、これは読み書きができない女性のいる家庭の貧困率の約6分の1となっている。 つまり、教育が極めて貧困削減に有効であることが明確で、教育はネパールの将来を築き上げるものであることがわかるが、それが長期的な取り組みであるが故に、その意義を国民理解に促し、将来的な利益還元に対する意識づけ、動機づけを行う必要がある。 さらに、政府の積極的な教育改革により基礎教育へのアクセスは改善されつつあり、男女間での教育格差は解消されているが、都市と農村、貧困、民族等の要因による一部の児童(対象児童)の未来が閉鎖的となっている現実があり、様々な地域固有の状況においた取り組みを行い、教育格差を解消する手立てを見出していくことが求められている。またそのため地域に根差して活動するNGOの有効な活用が期待される。 表 2 2 貧困と教育レベル (出典:Poverty in Nepal 2010/11  CBS/2011) (4)具体策の必要性 ネパール政府は、これまでに児童保護における重要性を認識し、様々な政策を打ち出し施行してきたが、インフォーマルな部分も存在するため、抜本的な解決とまでは至っていない。また、これらの問題に関しては、児童とより近い距離間で解決策を探っていく必要があり、地域社会の存在を無視して進めることは困難を極める。さらに、これらの問題を解決していくためには腰を据えた長期的な取り組みが必要になる。これまでにも政府は、CCWBやCPCの仕組みを構築してきたわけだが、現状では改善処置を講じるための予算確保が難しく、問題の矛先は経済的な基盤も脆弱なNGOに担われ、その働きの多くは持続性が乏しく不安定である。そのため、安定した財政基盤によって、恒久的な形で運営されるCCHが必要なことは言うまでもない。 他方、CCHの運営面においては、CCWBの運営指導のもと国内のほとんどのCCHがNGOの積極的な働きによって進められ、それらの活動には試行錯誤的な要素も多くあったものの、近年において、より効果的で実践的な経験則も蓄積されてきている。そのため、児童問題を解決していくうえでは、そうしたNGOの機動力を活用し、よりよいスキームで教育訓練を施しながら、その働きを後押しすることが肝要であると考えられる。これは、多民族国家でネパール特有の歴史的背景、複雑な社会環境の中で、児童保護の実効性を高めていくために、その多様性に対応しうる草の根レベルでのNGOの参画が必須だからである。そのためにも、具体的なビジョンを持ち、具体的な経験値を活用しながら、国家課題である児童保護の問題解決に取り組むための環境整備(活動場所の整備)が求められる。 そこで本プロジェクトは、社会的弱者である貧困や不当労働にあえぐ児童及びストリートチルドレンなど要援護児童に対して、最低限のQOLを確保し、将来への活路を切り開くための環境開発としてシェルター(寄宿舎、学校の統合施設)を建設し、運営管理については実践的で機動的に動けるNGOを連合組織として組成する。 具体的に、父母と死別した児童、父母に遺棄された児童、家庭環境不良の児童(父母の行方不明、長期入院、拘禁、離婚、再婚、心身障害など)、保護者がいても児童虐待を受けている児童、以上に準じると見なされている予備軍的な児童を人道支援の観点からシェルターに保護し、健康や体力、また健全な価値観や社会性の育成に努める。 もちろん、保護しただけでは抜本的な解決にはならないため、政府の開発計画に準じる基礎教育の充実という観点から、これまで就学の機会に恵まれなかった子どもたちのためにシェルター内に学校を建設し、基礎教育を提供していく。その重要性は、3.3.1で既に述べたように、子どもの未来のみならず家族、強いては社会・国家にも多くの便益をもたらすものである。 なお、本プロジェクトでは、CCHの集中するカトマンズ、ポカラに新たなシェルターを設置するものであるが、それは後述するように、現地研修型の教育訓練機会を設けることにより、本プロジェクトそのもの効果を高めることに加え、そのプロジェクト外のCCH施設群にもその効果の及ぼす副次的効果を狙うためである。 こうした環境整備により、子どものやる気を引き出し、子ども自身の自助努力を助け、生活していくためのスキルを取得させることが、結果的にはネパールの国益につながりるものである。本プロジェクトは、国家開発計画における貧困の撲滅のみならず、教育セクターの現状と課題に合致した内容を含むもので、ここに財政出動が求められる。